
球春到来-塾野球部が所属する東京六大学野球連盟の春季リーグが始まった。一昨年の日本一から一転、昨年は3位、5位と悔しい結果となった。外丸東眞主将を中心とした新チームの下でナインたちは陸の王者“奪還”に燃える。中でも注目を集めるのが、昨年秋はエース代役として防御率1.17をマーク 、最優秀防御率のタイトルを獲得した渡辺和大投手と、一年生ながら捕手を務め2本塁打をマークした渡辺憩選手の渡辺バッテリーだ。今や六大学野球の中心選手となった 2人、そんな渡辺バッテリーに、チームの現状やそれぞれの春季リーグを目前に控えた心境などの話を聞いた。
――それぞれが感じた大学野球の驚異
高校野球と大学野球の違いについてまず感じたのはレベルの高さだという。 「高校で中軸を担う選手が大学でも野球を続けることが多いので、レベルの違いは感じます」と和大選手。捕手として活躍する憩選手も「身体の大きさが違うので、打球の速さや飛距離が凄まじいです」と驚きを感じたそうだ。慶大野球部の印象については、和大選手は入部前には自主練習中心の雰囲気を想像していたが、 「実際は人数が多い分集団での練習が多い」と語る。一方、塾校出身の憩選手は「高校時代も慶應だったのであまり印象は変わってないですね。変わらず比較的自分のやりたいことができる環境でやらせてもらっています」と話した。
――忘れられない一戦、その瞬間
印象深い試合について尋ねられると、和大選手は「1年秋の早慶戦。スタンドからでしたが生で優勝の瞬間を観られたことは感動的でした」と振り返る。自身の登板では、「昨年秋の1回戦。自分が投げサヨナラ負けでしたが、そういう試合の方が印象に残ります。」と語った。一方、憩選手は「2020年秋の早慶戦。優勝がかかった試合で早稲田の蛭間選手が9回に逆転ホームランを放ったのですが、それを中学生の時に見ていてとても印象的でした」と語る。自身が出場した試合では、「サヨナラホームランを打った試合ですね。1年くらい経った今でも鮮明に覚えています」と振り返った。
――互いの視点、客観的な長所
和大選手は憩選手の捕手としての特徴について、「フレーミングの上手さ、スローイングの速さ、そしてその安定感」と大絶賛。「ブロッキングも優れていて、キャッチャーとしては文句ないです 。安心して打者との勝負に専念できます」と語る。一方、憩選手は和大選手の投手としての特徴について、テンポに注目した。「テンポいいので、バッターに考える隙を与えず試合を作っていける」と語り、「他のピッチャーよりテンポを大切にしているのかなという印象を受けます」とうまく特徴を表現した。

――今年のチームをどう見るか、自力と雰囲気
チームの特色について、和大選手は「昨年からピッチャー陣はあまり変わってないので、ピッチャー陣がしっかり抑えて、守備からリズムを作っていきたい。バッターも小技から長打まで幅広いバッティングができる人が多いので、チャンスを逃さない野球をしたい」と展望を語った。一方、憩選手は「昨年に比べてチームの雰囲気がとても良い」と笑顔。 「上級生が積極的にコミュニケーションをとってくださるので、下級生でもプレーしやすいです」と語った。
――個人目標と今季への覚悟
和大選手は「昨年よりも成績を残して、ベストナインを獲得したい」と闘志を燃やす 。 「チームとしては優勝を目指しているので、先発を任される立場として、試合をしっかりとつくって勝利に貢献したい」と決意を述べた。憩選手は「規定打席に到達し、打率3割以上を目指したい」と目標を掲げた。また、 「キャッチャーとして全試合に出場し、チームを勝たせられる存在になりたい。そして、目標としている明治大学の小島大河選手に追いつきたい」と熱く語った。
東京六大学野球連盟は2025年、創設100周年を迎える。その長い歴史の中で塾野球部は早慶戦をはじめ、数々の名勝負で神宮球場を盛り上げてきた。また、同部は日本野球機構(プロ野球)や日本野球連盟(社会人野球における最上位連盟)にも、多くの名選手を輩出しており、日本野球の発展に大きく貢献してきた。100年目という節目、淡いグレーの下地に、 「KEIO」の文字が入った伝統的なユニフォームに腕を通し、神宮の舞台位に立つ塾生たちの姿から目が離せない。休日はぜひ神宮球場に足を運び、慶應野球を肌で感じてみてはいかがだろうか。
渡辺和大…商3年。県立高松商高出身。高校時代は浅野翔吾(現読売ジャイアンツ)とプレーし、甲子園(夏)8強を経験。慶大では、1年から登板し、2年秋にブレイク。エース外丸の代役として最多登板を果たすと、スライダーを武器に防御率1.17をマークし最優秀防御率のタイトルを獲得。
渡辺憩…商2年。慶應義塾高出身。高校時代は正捕手として甲子園(夏)優勝を経験。慶大では、1年生ながら昨年は18試合に出場し、2本塁打をマーク。捕手としても多くの試合でスタメンマスクをかぶった。
(金田悠汰)