
性暴力なき社会へ Safe Campusインタビュー カギは正しく「知り」、「行動する」こと。
新歓が始まるこの時期は、一年の中でも性暴力に遭いやすい時期とされる。そこで今回、慶大内で性暴力をなくす取り組みを行っている学生有志のグループ「Safe Campus」に取材し、性暴力の実態とその対策を聞いた。
誰もが性暴力の被害者となりうる
―性暴力が生じる背景とは何でしょうか。また、性差別と性暴力の関係はどのようなものですか。
背景を捉える上で、「性的同意」という言葉を共有します。
性的同意とは、「性的行為に及ぶ前にお互いに積極的な意思表示を確かめ合うこと」を指し、同意のない性的行為は性暴力となります。
学生でも社会人でも、権力関係が生じる場で起こりやすいという特徴があげられます。対等でない関係では、断りにくい状況が生じるからです。
会社内だと昇進や生活がかかっていることが性暴力の発生に影響すると考えられます。ある大学では指導教員と学生との間で性暴力が生じた例がありました。
性暴力が起きる背景には社会構造的な要因や制度的な要因があり、そこに家父長的価値観に基づくミソジニー(女性蔑視)、性別二元論や異性愛中心主義によるホモフォビア(同性愛嫌悪)トランスフォビア(トランスジェンダーへの嫌悪)も含まれると考えます。
性暴力の被害者に女性が多いのは事実ですが、Safe Campusとしては現在、「被害者=女性」というイメージを発信することは避けています。男性やそれ以外の性別の人が性暴力について相談しづらい雰囲気を作らないためです。性暴力はすべての人が受ける可能性があります。
性暴力の防止 全塾協議会と協力
―過去に慶應でも、性暴力の事例が報告されたことがあります。大学での対応はどのようなものがありますか。
Safe Campusでは、性的同意・第三者介入ワークショップの動画を作成し、YouTubeで公開しています。この動画は毎年、全塾協議会に加盟するサークル幹部が視聴することが義務付けられています。
被害者は何も悪くない 相談ためらわないで
―被害を受けても相談を躊躇ってしまう人へ、アドバイスをお願いします。
相談しないという決断をすることは尊重されるべきですが、相談することを少しでも考えた場合には、「わざわざ相談するまでではない」と躊躇うのではなく、自分に合った相談機関に連絡を取ることができます。
周りは被害者を責めるのではなく、加害者の責任を追及する空気が形成されることが、セカンドレイプを防ぐためにも必要不可欠だと考えます。
―性被害に遭わないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。
Safe Campusは「性被害に遭わないようにしましょう」ということをメッセージにはしません。それでは、「被害者に落ち度があった・被害者が防げた」という言説に回収されかねません。
どのような状況でも、例えばお酒を飲んでいようと、どんな格好をしていようと、被害者は悪くありません。加害者に責任が負わされるべきです。被害に遭っても自分を責めることなく、自分のケアのために行動してほしいと思います。
カギは「第三者の行動」
―性暴力をなくすには、性暴力を許さない環境作りが必要だと分かりました。性暴力の根絶のために第三者ができる行動はありますか。
性暴力を目撃した際に推奨される行動に「5D」というものがあります。
Distract:注意をそらす
Delegate:第三者に助けを求める
Document:証拠を残す
Delay:後からの対応
Direct:直接介入する
この5Dアクションの中から、自分のできることを一つでも行動することが大切です。
「注意をそらす」は、例えば飲み会などで嫌がらせを受けている人がいたら、飲み物を倒すなどして加害者の注意を他に向けることができます。
「第三者に助けを求める」は、介入することで自分(目撃した人)にも加害が及ぶ可能性があるので、相談機関や警察などの第三者に助けを求めることです。
注意が必要なのは「証拠を残す」です。被害を録画・録音等で記録することは重要ですが、同時に、被害者の確認なくそれを他者(警察など)に見せてはいけません。また、被害者が記録を削除してほしい場合は削除してください。
「後からの対応」は、被害を目撃した後、被害者に相談先を教えたり、「あれは性暴力であり、訴えてよいことである」というような声掛けをすることです。被害者が「被害に遭ったと考えるのはオーバーだ」などと思い悩まずに済む可能性があります。
「直接介入する」は、加害者に対して直接「それはセクハラですよ」などと伝えることです。加害者に反応する隙を与えないため、簡潔に言うと効果的です。

自分のできることから一つでも行動することが大切(画像は取材をもとに弊紙が作成)
性暴力許さない環境作りへ
―最後に慶大生へメッセージをお願いします。
性暴力・ハラスメントなどを受けた場合には「慶應義塾ハラスメント委員会」などに相談ができます。私たちSafe Campusの活動を通して、性暴力やSOGIE(性的指向、性自認、性別表現)にかかわるハラスメントへの、日ごろの学生の意識を変え、大学に十分な啓発や制度の整備を求め、性にかかわるハラスメントのないキャンパスを作りたいと考えています。
Safe Campusは性的同意の重要性を訴え、「性的同意ハンドブック」を発行している。
また活動は、公式Instagram等でも詳しく知ることができる。