

(徳永皓一郎)
学生団体GEIL(ガイル、学生のための政策立案コンテスト運営団体、以下GEIL)は先月6、7日の二日間、「模擬立案会」と題したイベントを開催した。模擬立案会とは、政策立案を模擬的に体験する場である。毎年夏に行われる「学生のための政策立案コンテスト」では、日本全国から東京に集まった大学生が、チームに分かれ7泊8日にわたり政策立案に取り組む。模擬立案会でも、外部の有識者の意見を踏まえつつ、学生同士でリサーチ、議論を行った。
政策立案の第一歩──GEIL模擬立案会とは?
GEILは、1999年から毎年日本最大級の政策立案コンテストを学生向けに企画、運営している非営利の学生団体である。「GEIL」とはドイツ語の「すごい」という意味の若者言葉に由来する。「学生のための政策立案コンテスト」は今年で第27回目を迎え、「政策を通じて人と社会を変える」という理念を掲げている。毎年、GEIL構成員の議論の末その年に勉強する政策立案のお題(GEILではこれを「ケーステーマ」と呼ぶ)が決定され、昨年の「災害」に続き、今年は「地方創生」がテーマとなった。政策立案の参加者をサポートするため、GEIL構成員は一年間を通して、ケーステーマについて学び続ける。
コンテストに参加する人たちは政策立案の初心者が多いため、GEILのスタッフが(知識面でのアドバイザー)としてサポートを行う。実際に政府で政策立案を行う官僚と学生の最大の違いは、アクセス可能な情報の量である。官僚は政府のデータベースにアクセスできるという大きなメリットがあるが、学生はインターネットを通して、公文書や統計、論文を活用しながら政策を立案する。
政策立案のプロセス──学生が挑む「地方創生」
GEILは政策立案の基本的なプロセスを「現状分析」、「理想状態の設定」、「手法考案」の3つに整理している。「現状分析」では、現状の課題を具体的に分析し、因果関係を考察する。緻密な現状分析を行うことで、どこに課題の本質があるかを的確に見抜く。「理想状態の設定」とは、課題が解決された時、どのような状態になっているかをイメージすることだ。最後の「手法考案」は「現状」と「理想」の間のギャップを、政策によって埋めていく作業だ。政策の対象や必要な人材、資金などを具体的に検討する。
今回の模擬立案会のミッションは持続可能で適切な自治体の財政運営を促進する政策を立案することだ。2025年現在、慶大卒の石破茂首相の看板政策である「地方創生」の具体策が進行している。「地方創生」は2014年の第一次安倍政権で石破氏が初代地方創生担当相を務めた際に制定された「まち・ひと・しごと創生法」に基づく政策であり、地域の活性化、人口減少対策、雇用創出の三つを柱としている。GEILのスタッフは「国は自治体にお金を渡したきりで、余計な使い方がされることが問題だ」と語る。


白熱する議論と発表──未来の政策立案者たち
学生たちは1日目から2日目の昼過ぎまでの間にチームごとに情報収集や議論を行い、発表向けての準備を進めた。会場ではGEILのスタッフ、模擬立案会参加者を含む計50人程度の学生が7つのチームに分けられ、各チームのテーブルには模造紙が広がり、そこには学生たちのアイデアが付箋で貼られている。学生たちが議論を重ねた政策案は、2日目の15時から発表された。発表後の質疑応答の時間には多くの学生が挙手をし、内容を踏まえた有意義な質問が交わされた。
参加したチームの一つは、自主財源のみで自治体の財政運営ができていないことを課題とした。自治体が独自判断で進める事業が、住民のニーズと乖離していることやコンサルティング会社に依存していることにより、住民のきめ細やかなニーズに合った事業ができていないことが原因として挙げられる。そこで理想状態を、自治体職員と住民の距離が近いこと、産官学をつなげる人のネットワーク構築に設定した。自治体職員主導で、住民のニーズに合わせた事業展開をする持続的な基盤づくりのサポートする政策をチームは発表した。
GEIL代表が語る今後の展望
GEILの代表である一橋大学の山本航晴氏は「参加者に有意義な時間を提供し、参加者の笑顔が見られたことに達成感を感じている」と語る。コンテストのスタッフとして全国から集まってくる学生の前で、リーダーシップをとらなければいけないことに不安を感じつつも、「多様な価値観を持つ人々の異なった視点が得られること」に満足している。実際、夏のコンテストの参加者の3~4割は地方の学生が占めている。「政策を通じて人と社会を変える」という理念を実現するため、「多くの人を巻き込んでいきたいと」と山本氏は意気込みを語った。
GEILには慶應生のスタッフや参加者が少ないという。GEILは学生団体でありながら、大学から「インカレ」として扱われるため、慶應の新入生歓迎会には参加できない。この記事を読んでいる慶應生も、ぜひGEILに参加し、他大学の学生と熱い議論を交わす中で、『政策を通じて人と社会を変える』一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
入会受付は5月8日(木)まで(新歓LINEグループへの参加は下のQRコードから)

(徳永皓一郎)