今年5月、セーリングのレーザーラジアル級(以下、LR級)ロンドン五輪代表に選ばれた土居愛実さん(環1)。前回の北京五輪から種目として正式に採用されたLR級は、彼女が日本初のオリンピック選手となる。
土居さんがヨットと出会ったのは、小学2年生の時。兄が友達に誘われたのをきっかけに、彼女もセーリングの世界へ。「初めは怖かったんですけど、だんだん楽しくなりました」。当時は横浜ジュニアクラブに所属し、磯子の海で練習していた。中高一貫校に進学し、ダンス部に入部。平日は授業を受けるのに加えダンス部の活動がある日はヨットのための筋力トレーニング。部活がない日と休日はヨットの練習という日々を送った。
兄を追い高校からはヨットの強豪校に進むことも考えたが、両親の反対でそのまま一貫の高校に進学。同時に横浜ジュニアクラブを卒業し、江ノ島のヨット講習会で現コーチ・佐々木共之氏と出会う。それまで乗っていた小型のオプティミスト艇から、現在のLR級に変えた。初めは上手く乗れずに苦しんだという。「ヨットを辞めることも考えました」。しかし、佐々木コーチの指導で成長。今年5月にドイツのボルテンハゲンで行われたLR級世界選手権で五輪の切符をつかんだ。
土居さんは春から半年間慶大を休学しており、他種目の選手との現地トレーニングなど練習一色の日々を過ごしている。また、種目が異なるため、慶大體育会ヨット部には所属していない。
「増量が一番辛いです」と話す土居さん。艇の操縦には乗り手の体重が影響するが、「食べてもトレーニングですぐ消費してしまうのでなかなか増えないんです」という。
さらに決して実戦経験に乏しいわけではないが、同年代の選手が多かった中高生の時の大会とは異なり、大人の世界で戦うことに緊張、不安もあるという。
一方で精神的なことは余りレースに影響しないとも言う土居さん。大きいレースの前はメンタルトレーニングをすることもあるが、セーリングは環境に大きく左右されるスポーツであるため「当日にならないと何もわからない」そうだ。またレース中の様子は、「陸との位置や距離で絶えず変化する風や、相手の位置など周りの環境全てを考慮してコースを決めます。常に全身フル回転です」と笑いながら語ってくれた。
そんな土居さんにセーリングの魅力を尋ねると「よく聞かれるんですけど、実はよく分からないんです」と意外な答えが。「私はヨットに乗っているだけで楽しいんです。強いて言うなら解放感ですかね」と純粋にセーリングを楽しむ様子が窺えた。
「本番では自分らしい『攻め』のセーリングをしたい。10番以内を目標にしています」と気持ちは真っ直ぐロンドンに向かっている。まだまだ伸び盛りの彼女を精一杯応援したい。
(小原鈴夏)