福澤先生ウェーランド経済書講述記念講演会が先月15日、三田演説館で行われた。23回目となる今回の演題は「『修身要領』再考」。教職課程センター教授・福澤研究センター所長、米山光儀教授が登壇した。

修身要領は「独立自尊」を義塾建学の精神の象徴とした道徳綱領。米山教授は修身要領制定前後の時代における道徳、教育のあり方を紹介し、学問を貫徹することの重要性を口述した。

当時の文部省による儒教主義教育の推進に、福澤先生が反論したことを紹介。各時代の公議輿論に徹していなければいけないと提唱し、啓蒙主義を主張したという。

さらに、「教育の方針変化の結果」で、教育勅語を間接的に批判したという。米山教授は「福澤先生は独立自尊をもとに、学ぶ雰囲気をつくっていくことを大切にした」と話した。義塾で学問をたくさん行い、生活をしていく中で無意識に知徳を身につけていくことを重視していたとした。

「慶應義塾の目的」を語った背景は、福澤先生の慶應義塾、および日本社会の状況への危機感であると米山教授は考察。また1898年に大病に侵され、自身の残りわずかな人生を実感する。「この状況下が要因で修身要領作成のかじを取ったのではないか」と語った。