「スマートフォン」の名で知られる多機能型携帯端末(以下、スマートフォン)が急速な成長を遂げている。手軽で便利なツールである一方、いくつかの問題があるのをご存じだろうか。今後、私たちはいかにしてスマートフォンと付き合っていくのか。そして、スマートフォンは今後いかなる進化を遂げるのか。慶大メディア・政策研究所特別招聘教授、夏野剛氏にお話を伺った。
現在のスマートフォンは、従来のネットワークの能力を上げたことで大量のデータ通信が可能となった。一方で通信料金も上がっており、電池の持ちも悪い。従来の携帯電話はユーザー保護の視点で作られていたが、スマートフォンは規制が少なく、自己責任に委ねられているという違いがある。「スマートフォンはさまざまな点において携帯電話の延長線ではなく、小型パソコンである意識を持つべき」と夏野氏は言う。 とりわけ問題とされているのが個人情報の管理だ。「個人情報の取り扱いはユーザーの意識の問題」と述べる夏野氏。昨今、個人情報漏えいに関する話題が耳目を引いているが、鍵となるのはアプリケーションサービス(以下アプリ)の理解である。
個人情報利用の論点は2点。1点目が、ダウンロードしたアプリが利用者が想定していなかった情報をサーバーに送っていた場合。2点目が、その情報を本来のアプリサービス以外の目的で使用していた場合だ。前者はユーザーが、利用するアプリが抜き出す個人情報の内容を確認していなかったというだけで違法とはならないが、後者は個人情報保護法違反となる。悪用されるとメールアドレスなど個人情報の名簿が販売され、迷惑メールの原因となる。
こうした事態を防ぐために夏野氏は、「不用意に必要のないアプリや、どういう動きをするのかわからないアプリをダウンロードしない方がいい」と述べる。危ないアプリを見分けるために設定でどのアプリが何のデータを取っているか確認することが重要だ。夏野氏によると、今後のスマートフォン市場はAI(人工知能)の導入、I/O(インプット/アウトプット)の発展、バイオメトリックス(生体認証)、バッテリーの向上の4つの方向に進化するという。
人工知能の要素を入れることで活用技術の高い人はより感覚的に、低い人でもスマートフォンと対話するような形で情報が簡単に取れるようになるそうだ。
また、今は実在するキーボードやタッチパネルでインプット(入力)してディスプレイ上にアウトプット(表示)している。バーチャルのキーボードやディスプレイが可能となれば、小型端末でも大型画面での操作を実現できるかもしれない。さらに、「パスワード管理も自身の体を使うことでより簡単になるし、バッテリー技術も進化するだろう」と夏野氏は話す。 急速に私たちの生活を変えているスマートフォン。今後さらなる発展が予測されるが、重要なのは「IT技術はあくまで道具なのだから、上手く使って個人の生活レベルを上げていく」ことである。 (小原鈴夏)