完全優勝を成し遂げた昨春の早慶戦から1年。チームを率いる監督と主将から見た早慶戦とは――

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「早慶戦は別物」。そう語るのは慶應義塾体育会野球部の江藤省三監督。リーグ戦の最後にある早慶戦は他の試合と比べても特別な思いがある。「互いにライバル。昔から早慶戦だけは勝たないといけないという思いがある」
伝統的な早稲田のカラーは一言で表すと、精神野球。簡単にはあきらめない粘り強さをもっているという。それに対し慶應は伝統的にチームワークの良さが光る。「内容は泥臭くてもいいが、見た目には慶應らしいスマートな勝ち方をしたい」。こう話す監督のもと、チームワークを武器に勝利を目指す。
江藤監督が一番印象に残っている早慶戦は一昨年の秋。早慶両校が勝ち点・勝率をそろえて首位に並んだ。天皇杯の行方は優勝決定戦にもつれこむ。両校による優勝決定戦は50年ぶり、また早大斎藤佑樹投手の六大学野球最後の試合ということで、観客は超満員、マスコミもこぞってとりあげた。慶大は惜しくも勝利を逃すが「あのような雰囲気の早慶戦をもう一度」と江藤監督は話す。
「早慶戦をあまり知らない観客に、これが早慶戦と知れるような、来てよかったと思われるようないい試合をしたい」。来月2・3日の早慶戦を前に江藤監督は慶應らしい勝利への意気込みを語った。

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「よし、やろうという気持ちになるのが早慶戦」と話すのは慶大打線の中軸として今年も活躍が期待される山﨑錬主将(商4)。観客が多いため意識しないと思っていても自然と意識してしまうそうだ。やはり緊張感はそれとなく高まっていってしまうという。しかし「チャンスでの一本。そこにすべて集中して力を出し切れたらいい」と緊張を振り切る熱い想いを胸に秘める。
山﨑主将にとって早大は「名門」のイメージ。全国から精鋭が集まる早大にはチーム力がある。また、早慶戦では最終学年の4年生の粘り強さが印象的であると話す。
早慶戦の戦い方は「特に早稲田だからと言って何かを変えるのではなく、自分たちがやってきた野球を出すだけ」と話す。ミスをせず、守備から流れをつくり、接戦をものにしていく慶大の戦い方で勝利を目指す。
2年生秋の早慶戦2回戦で当時の早大投手陣の三本柱の一人、福井優也投手から試合を決めるホームランを打った。この決勝ホームランにより慶大は首位早大に追いつき、早慶両校による優勝決定戦に持ち込んだ。
連敗に終わってしまった昨秋の早慶戦。主将は「そのとき見に来てくれた方の前ではまだ勝っていない。今度こそは連勝して慶應野球部の強いところをしっかりと見せたい」と意気揚々である。
昨年から中心打者として活躍し、守備でも引っ張っていこうという姿勢を見せた山﨑主将。今年も変わらず、誰よりも練習をして背中でチームを引っ張っていくことを心掛けている彼は、主将に就いて一段と気が引き締まったという。「早慶戦は負けられない。応援してきてくださった塾生と一緒に塾歌を歌いたい」と語る主将の目はライバル、早稲田との戦いを見据えていた。  (稲垣遥河)