「2012春 国際産学官連携シンポジウム in keio大学の知財・技術移転部門の今後の自立のあり方を考える」が先月2日、三田キャンパス北館ホールで行われた。同シンポジウムは、文科省大学等産学官連携自立化促進プログラムの一環として、慶應義塾大学研究連携推進本部が主催したもの。
2002年の知財立国宣言後、政府支援の下で大学は知財・技術移転体制の基盤整理を進めてきた。国の成長戦略において、産学官による知のネットワークの構築やイノベーション創出に向けて三者が共同で推進できる場の構築が重要な課題となっており、大学が社会に果たすべき役割は極めて大きいとされる。しかし、柔軟性や自立の点で日本は米国に大きな遅れを取っており、課題も山積みである。基盤整備が一段落し、質の向上や社会との関係を考える段階へ進んだ今、そのような現状を視野に、欧米の専門家を交えて今後のあり方を探ることを開催趣旨としている。
官を代表して文科省から里見朋香氏、経産省から進藤秀夫氏を迎え、それぞれ来賓挨拶を行なった。その後、米国からアシュレー・スティーブンズ博士、豪州からケビン・カレン博士を招き、両者による基調講演が行なわれた。
基調講演では、両者ともに蓄積した知を社会に還元していくことは大学の使命であり、重要であると語った。しかし、欧米でも収支バランスに苦しむ大学機関が多いことから、持続的な社会貢献を可能にするさまざまな案が提示された。アシュレー博士は、顧客設定をしっかりと行い、潜在的ニーズを呼び起こすことでマーケットを誘導していく戦略や、試作開発資金を与え、基礎研究と事業化の間に存在するギャップを埋めることで、技術移転や新規産業の創出を促す基金について論じた。またケビン博士は、社会がより簡単に知的財産を利用できるような枠組み作りの必要性を語った。
講演後、両博士に加えて三木俊克氏、正城敏博氏、伊藤伸氏、山中直明氏、羽鳥賢一氏が登壇しパネル討論を行なった。会場には、産業界からも関係者が多く出席しており、会場とパネリストが一体となって白熱した討論が行われた。