慶大体育会の活躍の裏には、選手を同じ学生の立場ながら支える存在がある。体育会野球部で学生スタッフを務める角田英信さん(政3)、体育会ソッカー部でマネージャーを務める江坂夏美さん(経1)、大塚安希さん(経1)、呉田幸子さん(政2)にお話を伺った。
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慶大体育会野球部の学生スタッフは、選手を補佐する存在である。具体的な仕事には練習メニューの決定から分析、監督との情報共有、さらには2、3軍のチーム編成までもが含まれる。練習中はグラウンドマネージャーとしての役割を担い、選手へのアドバイスも行う。選手と監督の架け橋としての役割が強い。
角田さんが選手から学生スタッフに転身したのは2年生の11月。新チームになるにあたり、2軍メンバーにすらなることができない中で、このまま選手を続けるか、別の形でチームに貢献するかを悩んだ末、出した結論が転身だった。「葛藤はあった。でも今では、自分の気軽に相談してもらえる性格を活かしながら野球に携われていると感じている」と振り返る。
7歳で野球を始め、以来選手としての野球人生を送ってきたが、学生スタッフとなり150人を超える選手と間近で接し、技術的な進歩だけでなく野球観も変化したと言う。「自分のアドバイスで選手がうまくいったり、自分が推薦した選手が試合で活躍すると幸せを感じる」
一流選手を多く抱える慶大野球部を支える中で感じるのは、「主力の選手は追いつきたい目標が常に高いところにある。日頃から限界の半歩先まで努力している」ことだ。普段の活動で重きを置いているのは、選手にさりげなく高い目標を示すことと、その実現のための環境づくり。
そんな彼の目標は「誰が出ても神宮の舞台で活躍できるチームを作ること。日の光が当たらない人の気持ちもわかる。全員に平等にチャンスがあるし、そのための手助けをしたい」
「転身する時に学生スタッフを極めようと思った。1軍のメンバーの努力や意識の高さを知ることができたし、昨年春の優勝にもサポート面で貢献できた。日々を充実させるために大事なのは高い目標をもって努力すること」。挫折を味わいながらも、脇役へとポジションを移し、選手では届かなかった神宮の舞台で彼は戦っている。 (柚木秀也)
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ソッカー部のマネージャーと言えば、チームの運営が仕事だ。「OB会の運営、早慶戦などのイベントの運営など、非常に難しいことではあるが、とてもやりがいがある」(呉田)「そういう小さな仕事の積み重ねが、大変ではあるが、チームの支えになっていると感じられる」(大塚)と、仕事へのやりがいを語ってくれた。
また、練習後週に5回以上は開催されるというミーティングにも参加し、「友人との約束を急に断ってしまうことも多々あるが、自分はソッカー部だからと割り切っている」(江坂)「マネージャーとして生きている。キャンパスのどこを歩くのにもソッカー部の一人として歩いている」と、ソッカー部が彼女たちの生活そのものになっていた。
「日本一」を目標に掲げるソッカー部であるが、その目標が現実的になったのは、ほんの数年前のことである。「先輩たちが日本一を現実的にしてくれた。今年は戦力が落ちると言われているが、全く新しいチームとして、新たな可能性に挑戦していきたい」(呉田)と、今シーズンへの熱い思いを語ってくれた。
最後に全員が口を揃えて言った。「試合での歓声は、選手たちだけではなく、自分たちへの応援にもなっている。昨シーズンに引き続き、たくさんの人に試合に来てほしい」 (橋本遥)