新入生が期待に胸を膨らませ、新生活に向けて準備を始める3月。今年に限っては、東日本大震災から1年という節目の時でもある。震災以降、「絆」や「支え合い」を見つめ直す暮らし方に注目が集まっているという。
学生が衣食住を通じて「絆」を深められる場所といえば、学生寮だ。そこで、塾生専用の大森学生寮にて、寮のみなさんと寮を運営する共立メンテナンス社の方に暮らしの中の「絆」についてお話を伺った。
寮に入館するとすぐに目に入るのが食堂だ。ここは、寮生にとって食事の場であるだけでなく、コミュニケーションの場でもある。「昨日は日本人の寮生と留学生の寮生が一緒に経済の勉強をしていた。学生の本来あるべき姿が見られて、とても気持ちがよかったですね」と寮長の南條豊さん。
他にも談話室や、「裸の付き合い」ができる広い共同浴場などの共有スペースで、寮生同士は絆を深めている。「部活やサークルと違い、学年も、学部も、興味分野も全く違う人たちが集まる。そういう友人たちと共に生活する中で、自分の視野が以前よりも広がったと感じます」と山田佳子さん(法2)は話す。
寮生同士の交流を促すイベントも充実している。5月に行われるウェルカムパーティーの他にも、以前には日本人の寮生と留学生の寮生の交流を深めようと、日本文化に親しむイベントを開催したという。
留学生との交流は、大森学生寮の大きな魅力の一つだ。「留学生との交流を通じて、留学をする決心がついた」と話すのは、小川達也さん(政3)。昨年秋、留学先の香港から帰ってきたばかりだ。
しかし、「一人暮らしに比べ、自由な時間やプライベートが確保できないのではないか」といった理由で、共同生活に抵抗を感じる若者も少なくない。これについて小川さんは、「規則に縛られるのは確かに窮屈に感じるかもしれない。しかし、みんなが気持ちよく生活するにはどうすればいいかということを常に考えることができるのは、実は有意義なことでもある。共同生活を送る上で必要なマナーは、ささいなことではあるが、社会人として身につけなくてはならないスキルだと思うからです」と語った。
大森学生寮を運営する共立メンテナンス社の伊藤進一さんは、「寮生活を経験した学生には、協調性やコミュニケーション能力が高いといった印象を持つ人事の方もいる。就職活動やその先の社会人生活においても、学生時代の寮生活での経験がメリットになるかもしれません」と説明する。
コミュニケーションを大切にし、みんなが気持ちよく生活できるように思いやりの心を持つ。そして、つらいことも楽しいことも、支え合いながら共に乗り越え、絆を深める。今年の春は、そんな暮らしを始めてみるのもいいかもしれない。
(竹田あずさ)