小中高と年を重ね、大学生ともなると急に行動の選択肢が増え、世界が開ける。暗い未来予想図ばかり見せられて育った世代だ。世の中には面白いことが溢れていると知った感動もひとしおだろう▼大学生が受けるのは感動ばかりではない。「どんなことをするにも先立つものが必要」。現実の厳しさと、社会人予備軍としての立ち位置を再確認する▼学生バイトのプロ意識が低下していると言われる。「ここでずっと働くわけではない」。社員と比べ責任が軽いのをいいことに、軽率な失敗を犯しては逃げ口上を並べる▼「先立つもの」の代償が、短い大学生活の単なる切り売りでは寂しい。就職戦線の冷え込みに改善が見えない今だからこそ、非社員という逃げの論理は捨て、社会人の予行としてアルバイトを位置づけたい▼社員であれば業務効率の改善なりサービス向上なり、多かれ少なかれ目的を持ち、その達成に喜びを感じる。同じ職場に働くのなら、同じ喜びを得たいものだ。それにとどまらず、つまらないと思っていた仕事すら「面白いこと」に変える発想を持つことは、誰もが希望する職業に就けるとは限らない現代を生き抜く術にもなるはずだ。 (岡本直人)