今月5日、衆議院議員で元経産省大臣・財務金融委員長の海江田万里氏が招かれ、三田キャンパス北館ホールにて「10年後の日本」と題した講演が行われた。主催は慶應義塾大学文化団体連盟本部と文化団体連盟三田会。海江田氏は少子高齢化によって先行きが不安視される年金問題にふれ、高齢者の自立が重要であり、また増税もやむなしとの考えを示した。  (堀内将大)

 海江田氏は1972年に慶大法学部政治学科を卒業した経済評論家で、現在野田内閣で衆議院財務金融委員長を務める。
 海江田氏は講演のはじめに10年前と現在の日本の経済状況を比較。1ドル=120円から130円と円安だった円相場が、10年で1ドル80円を割るまで円高になったことを指摘し、「日本にとって停滞・凋落の10年間だった」と述べた。
 日本の人口については、10年後には減少傾向に転ずるとの予想がなされており、さらに平均年齢は45・3歳から48・6歳になると見込まれるというデータを紹介。日本の少子高齢化が10年後にはさらに進行するとした上で、年金問題をはじめとする社会医療保障制度について言及した。そして「高齢化によって年金・医療・介護といった社会保障費は増大し、少子化に伴いそれを負担する生産者人口は少なくなる。高齢者の自立が必須で、それを国全体で後押しする必要がある」と語り、現在発展途上である日本の介護制度の拡充が不可欠だとした。
 その上で、消費税増税もやむを得ないという考えを示し、「消費税を1%引き上げると、およそ2兆円の増収になるが、財政の穴埋めではないため、社会保障の充実に充てるべき」と述べた。現在の年金制度の問題点としては企業の競争激化、雇用形態の変化による厚生年金加入者の半減、年金受給開始年齢の引き上げに伴う定年後の空白期間などを指摘。制度見直しの必要性を訴えた。
 海江田氏は消費税について「10年後には、消費税は10―15%になる。逆進性を緩和する対策が必要」と説明。カナダのソーシャルセキュリティーナンバー制度によって財を再分配する「戻し税」を引き合いに出し、全員から消費税を徴収し、所得を正確に把握した上で、生活の苦しい人々に再分配する制度を提案した。
 講演会の最後に海江田氏は「(今の)日本は太陽で例えると午後3時の位置。先を見据えた方策が必要」とし、「10年後の日本の状況を意識し、自分が何をできるか考えてほしい」と聴講者に訴え、講演を締めくくった。
 塾員も数多く来場し、海江田氏の質問に答える形で双方向的に講演は進行した。