キャンパス内で運命の出会いって、本当にあるのでしょうか。(法1女)
* * *
「ないないない。少女
マンガの読みすぎだって!」と依頼メールを笑い飛ばすのは、趣味はラーメン(大盛り)の食べ歩き、恋の予感は皆無の所員N(政2女)。今年のクリスマスも、このままいけば確実にシングルベルの音を響かせるだろう。そんなNを見て、所長A(政3女)が怒鳴る。「非リアのあんたに言われたくないわよ!ちょっと体張って出会い探してきなさい!」
先日恋人とラブラブディズニーシーを満喫し、満足げにリア充のシンボル・ダッ●ィーを抱きしめるAからの指令には逆らえねえ……。目に悔し涙をにじませながら、Nは調査を開始した。
とある日の朝、なんだかんだノリノリのNが手にするのはトースト。「これを口にくわえながら走って、角を曲がれば……むふふ」と期待を膨らませるN。少女マンガの読みすぎと依頼メールを笑い飛ばした口に食パンをくわえ、銀杏並木を走り出した。「ひほふひひゃう!ひほふひひゃう!(遅刻しちゃう!遅刻しちゃう!)」と叫びながら並木道の傾斜を血眼で登り、曲がり角に近づくN。落ち葉の清掃をしているおじさまのあぜんとした様子と、登校する生徒たちのドン引きした視線が痛い。周りの反応を表すかのような冷たい風が追い風となり、Nはとうとう曲がり角を曲がる――が、面倒はごめんだと言うかのように避ける通行人たち……。
「みんな朝は低血圧なのかな?☆」
いつの間にか誰よりも運命を信じているNはしぶとくTAKE2。すでにパンくずだらけの口に食パンをくわえ、銀杏並木を……(以下略)。肝心の曲がり角を曲がると、そこには人が……。
ドンッ。
「ぶ、ぶつかった……。」ドキドキしながらNが顔を見上げたその先にいたのは、昨年生物を履修していたA先生。目を見開き、口をぽかーんと開けて、もはやドン引きの様を通り越している。まさかご自分がこのマヌケな生徒を教えたことがあるなんて、記憶から消したいに違いない。
「あ…すみません……」さすがのNも放塾になるのは避けたいのでしぶしぶ撤退。
続いて、「絡まれてるところを助けられるっていうシチュエーションなら、男気あるイケメンに出会えるかも!」とNは所員を招集し、「私に絡んでるふりをして!」と無理なお願い。最近髪の色がヤンキー風な所員S(商1男)と、いかにもガラの悪そうな所員T(政2男)がNに迫る。
S「おネエちゃん、大事な服が汚れちゃったじゃんかよぉ」
T「どうしてくれんだよっ」
N「えぇー、やめてください!!(猫なで声)」
……いつまで経てどイケメンどころか誰も助けに来ねえ……。どうやらただのネクラな井戸端会議に見えたようだ。そりゃみんなかかわりたくないよね。失敗。
転んでもただじゃ起きないN。続く舞台はメディアセンター。たどりついた先は理系の本が並ぶ書庫。「同じ本を取ろうとして手が触れて……(略)」。黒いジャケットをキメた理系BOYに目をつけ、接近。「量子化学」「素粒子」……Nには理解不能だが理系BOYと交際すれば聞けること。すかさず隣に近づくが、ちらっとこちらを見て距離を取る理系BOY。彼の視線を追いつつ、不自然にも下から2番目の棚に並んだ本に手を伸ばす……。
指先が触れた。
触れた部分が熱い。ドク・ドク・ドク……
心臓の音が聞こえちゃいそう………
―――――などということはなく、怪訝そうな顔でこちらを見る理系BOY。「メディアは遊び場じゃねえんだよ!」と言わんばかりだ。さすがのNも勤勉な理系BOYには何も言えねえ……。
悔しまぎれに『ライフサイエンス系の基礎物理化学』(謎)を借り、とぼとぼと事務所に帰ると、あのクマ(注・ダッ●ィー)がNに同情の目を向けるのだった。
「ミ●ー(某ネズミ)でもいいから誰か買ってぇぇえええぇぇえ!!!!」
(キャンベル)