学ぶ意欲ある者にとってうれしい取り組みがある。皆さんはオープンコースウェア(OCW)という活動を知っているだろうか。
OCWとは、2001年にマサチューセッツ工科大学(MIT)によって提唱された「大学などの正規で提供している講義をインターネット上で無償公開する取り組み」である。正規で提供されている講義とは単位取得の対象とされる講義のことだ。そのほかにもOCWでは公開講座や特別講義も公開されている。
今回、国際オープンコースウェア・コンソーシアム理事でもあり、日本オープンコースウェア協会(JOCW)の事務局長である福原美三氏に、OCWについてお話を伺った。
「知識は人類の共有の財産である。社会全体で知識を共有することによって社会貢献をしよう、という目的の下にOCWは始まった」と福原氏。「高等教育に恵まれない地域や環境におかれている人や、自身の知的レベルのさらなる向上を求める人を提供対象者としている」
OCW導入当時、日本におけるITCの分野、特にeラーニングの活用が遅れていることに危機感を感じていた日本の大学側に、MITがOCW導入を打診。そして、2005年5月13日に大阪大学・京都大学・慶應義塾大学・東京大学・東京工業大学・早稲田大学の6大学が日本のOCWの6大学同時開設を発表した。2011年7月現在、日本でOCWに参加しているのは23大学、3非営利団体、16企業にもなり、インターネットで公開されているコースも1800を超えている。
「OCWを導入することで学習選択の機会を増やし、学習の幅を広げることが可能になる」と福原氏。「普段と同じありのままの講義が公開されているので、受講生は授業内容や様子、先生から自分のイメージに合う大学や大学院を比較して選ぶことができる」とした上で、「講義は社会で公開されるので、先生側もより良いものを提供しようと講義そのもののパフォーマンスも向上する。普段の講義受講者にとっても、OCWの利用者にとっても利点になる」と話す。
また、日本におけるOCWの問題点として、「現在JOCWが提供しているコースの中で、英訳がなされたものは全体の1割程度。海外への知識の提供という意味では、貢献は不十分だ。OCWに協力する先生がまだまだ少ないこと、財政的な面での資金不足が現在の課題である」と指摘した。
今回、慶應OCWには、OCW導入時を知る担当者が不在のため取材をすることができなかったが、慶大はOCWを日本で導入した最初の大学の一つであり、日本のOCWを推進してきた立場にある。現在、慶應OCWのホームページは2008年からコースの更新がされていないようだが、過去には月約3万人が慶應OCWを利用していたというデータがある。日本でOCWを先導してきた存在として、今後慶應OCWが日本や世界の教育にどう貢献していくのか、働きに期待したい。
知識社会とも言われる日本の現代社会では、継続的な学習は必須だ。日々の学習手段のひとつとして、OCWを利用してみてはどうだろうか。
(工藤玲奈)