慶大医学部皮膚科学教室の天谷雅行教授、高橋勇人助教授、河野通良助教授らの研究グループは、皮膚炎の中でもこれまで原因不明で治療が困難であった、自己免疫反応によって発症する皮膚炎の存在を発見したと発表した。
自己免疫反応とは、本来異物を認識し排除する機能をもつヘルパーT細胞が自分自身の正常な組織や細胞にまで過剰に反応することで、自分の体を攻撃するようになってしまった状態のことである。
今回の研究では、デスモグレインという正常なたんぱく質に反応する種類のヘルパーT細胞が、自己免疫反応によってデスモグレインの存在する表皮細胞を直接攻撃して、皮膚炎を起こすことが観察された。またその発症には、免疫反応を調節するインターフェロンガンマと呼ばれるたんぱく質が関係していることが明らかになった。
さらにデスモグレインがない状態では、ヘルパーT細胞の増加およびヘルパーT細胞が本来持っていた天疱瘡(てんぼうそう)を起こす性質も見られた。デスモグレインの存在により、有害なT細胞を抑制することで自己免疫反応を起こさないようにする免疫寛容という機能が存在することも確認された。
この発見によって薬疹、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、膠原病(こうげんびょう)、骨髄移植の副作用などで表れる皮膚炎の仕組みが明らかになったため、この研究が副作用の少ない新規治療薬の開発、また自己免疫疾患全般の予防、治療に生かされることが期待されている。