国内大学の評価向上に期待するゴエル氏
国内大学の評価向上に期待するゴエル氏

海外の大学への注目が、日本国内でも高まっている。NHK「白熱教室」シリーズではハーバード大やスタンフォード大の授業をシリーズで放送し、好評を博した。

一方、日本における大学の国際発信力は決して高くはない。特に権威があるとされるTimes Higher Education社のランキングで、日本の大学は50位以内に唯一東大がランクイン(26位)するのみだ。しかし、これは国内大学が持つ国際競争力の低さを意味するものではないという。

「日本の大学における研究水準自体は大変高く、国際的にも全くひけをとりません」。英語論文の校正サービス「エディテージ」などを展開しているカクタス・コミュニケーションズ社のアビシェック・ゴエル社長は語る。

そもそも、大学はどのような基準で格付けされているのだろうか。「外国人教員の比率や、図書館・ネット環境の整備率、留学生の受入数などさまざまですが、中でも決め手となるのが研究の質と量です」。前述のTimes社ではこれが評価の実に6割を占めるという。そして研究の質と量に対する評価には重要な評価基準が存在する。「論文の引用頻度」だ。

実はここに、国内大学がランキング上位になかなか食い込めない構造的な事情がある。「多くの格付けでは,原則的に英語論文における引用のみカウントしており、日本語の論文は著名な論文誌に掲載されたもの以外は見過ごされてしまいます」。つまり、日本語の論文を日本人が引用した回数などは、そもそも数の内にも入らないということだ。これでは日本の大学が過小評価されるのもうなずける。

この構造が今後も続く以上、日本の大学が国際的地位を高めるためには英語で論文を発信していく必要がある。しかし、すべての研究者が英語に通じているわけではない。

そこで注目したいのが、同社の手掛ける英語論文校正サービスだ。海外に論文を投稿する際には通例、論文のテーマと要点をまとめたカバーレターを添付する。編集者が最初に読むのはこのカバーレターであり、この第一印象によっては論文の中身が全く読まれないということも起こる。同社はこのカバーレターおよび、論文冒頭の抄録を添削するサービスを中心に、論文の中身や構成についての校正・アドバイスおよび翻訳サービスを提供する。

MITやハーバード大学は多くの優秀な留学生を受け入れ、多様なアイディアによって研究の質を高めていることで知られる。大学の格付けは、そのような留学生が留学先を選ぶ際の大きな参考となる。日本の大学からもより多くの英語論文が投稿され、ランキングが向上することで優秀な留学生の獲得へとつながることを期待したい。(岡本直人)