2月6日三田キャンパスで、EUの欧州議会議長であるハンス・ゲルト・ペテリング氏が「リスボン条約と今後のEU」という議題の講演会を行った。議長が日本の大学生と交流することを希望したことで、この講演会が実現した。大勢の学生や研究者らが集まり、旧図書館2階の大会議室は立ち見が出るほどの超満員となった。
講演の中で議長は何度も、EUと日本の協力関係を強調した。気候変動への対応では、EUと日本は同じ目標であるとし、気候変動運動は京都議定書から始まったとも述べた。
また、異文化間の対話の必要性を語り、西洋とイスラムの間でも文明の衝突を避け、お互い対話を通して誤解を解き、理解を深めたいと話した。一貫して平和共存について言葉を強くしていた議長は、EUの役割としてヨーロッパ内から世界へと活動を広げる方針であるとした。現在は強力な経済主体であるEUだが、将来は外交政策の中心にもなるであろうとEUの影響力を示した。EU内の組織の活動を円滑にし、一貫性を持たせること、加えてリスボン条約の批准手続きを完了させ、2009年1月1日に発行することを目標とするなど、EU内の話にも触れた。現在日本でも議論となっている死刑廃止についても述べ、EUは死刑廃止の立場をとっているとし、死刑執行国である日本に対してそれを呼びかけた場面は印象的であった。
講演会の目的でもあった塾生との交流を尊重するために、司会の田中俊郎法学部教授から「学生から優先的に質問する場を与えます」とあり、多くの塾生らが積極的に質問をした。博士課程の学生は、「全く異なった価値観を持つ人々といかに共存するのか」とたずね、議長は「民主主義や法的秩序の形成が社会的に必要だ」と回答した。他の質問では「リスボン条約の批准について、なぜ国民投票を行わないのか」と問われ、議長はド・ゴールの「国民投票にかけた問いに答えはない」という言葉を引用し、「それは真実を含む。国民が選んだ政治家が決めれば良いのではないか」と答えた。
他にも興味深い質疑応答が活発に行われ、有意義な交流の場となった。議長は集まった学生に向けて、「福澤諭吉を模範にしてヨーロッパに来て、複雑さを知ってほしい」と言葉を残した。