キャンパス内で打ち水に興じる塾生
キャンパス内で打ち水に興じる塾生

7月某日、テスト期間真っただ中の三田キャンパスに突如、浴衣を着た総勢40人の学生の集団が現れた。片手には桶、もう片方の手にはポリタンクに入ったそうめんのゆで汁をもち、「せーの」の掛け声で一斉にバシャバシャと木陰で打ち水を始めた。

この打ち水は、節電の夏を少しでも涼しく乗り切るために学生が自主的に行った試みだ。先月行われた七夕祭でも打ち水が行われるなど、節電によって打ち水への関心が高まってきているように思われる。しかし、そもそも打ち水はどのように行うべきで、どのような効果が期待できるのか。毎年「打ち水大作戦」を企画・運営している打ち水大作戦本部の松村みどりさんに「打ち水のいろは」を伺った。

打ち水の起源は茶道にあるという。江戸時代になって江戸の庶民の間にも広がり、家の前の埃を抑えたり、夏の涼を取ったりするための手段になったようだ。

打ち水をすると気化熱によって地面の熱が大気中に逃げていく。気化熱とは水が気体になるときに周囲から吸収する熱のこと。地面にまかれた水は、蒸発するために熱を地面から奪っていく。これが打ち水によって涼しくなる理由だという。打ち水をより効果的に行うには朝夕の涼しい時間帯に日陰や風通しの良い場所で行うのが望ましいとも言われており、また、できる限り大勢で広範囲に行うとより打ち水の効果が持続するという。

では、打ち水はどの程度気温を下げる効果があるのだろうか。打ち水大作戦本部のデータによると、打ち水後には通常1ー2度の気温低下が見られるそうだが、「体感温度というものは数値だけでは表せません」と松村さん。温度計の気温は下がっていないにも関わらず「気持ちが良かった」「涼しく感じた」という意見が多くきかれるそう。打ち水で水に触れることや、浴衣・風鈴などと組み合わせることで、実際の温度より涼しく感じることができるという。

いつでもどこでも簡単にできる打ち水だが、一つだけルールがあるそうだ。「『打ち水大作戦』ではルールとして二次利用水を使うように呼びかけています」と松村さんは言う。打ち水をすることで大勢の人が水道水を大量に消費しないように、また、生活の中での水の再利用について注目してもらえるよう、雨水やお風呂の残り湯などの二次利用水の活用をルールとして定めている。

電力事情の逼迫で例年より暑くなりそうな今年の夏。江戸からの知恵、「打ち水」で涼しく、かつ粋に夏を乗り切ってみてはいかがだろうか。

(荒川桃子)