「昆虫食」と聞くと、どのようなイメージを抱くだろうか。たいてい昆虫食は「ゲテモノ」扱いされる。信州地方ではイナゴやハチノコが昔から食材として食べ続けられてきたという事実にもかかわらず、昆虫は食材としてメジャーな認識を受けていない。
国内唯一の「昆虫料理研究家」、内山昭一氏率いる昆虫料理研究委員会が運営するイベント、東京虫くいフェスティバルvol.2(虫フェス)が先月16日、東京都中野の桃園会館にて開催された。会場内では昆虫食の物品販売もあり、その場で昆虫料理を楽しむことができる。昆虫食初心者でも参加しやすいようにトーク中心で内容が構成された。
今回のテーマは「虫の美味しさのヒミツ」。大手食品会社の専門家をゲストに迎え、虫の味についての研究成果を発表した。
他には、災害時における昆虫の利用法・海外メディアにみる昆虫食の紹介や、内山氏と昆虫マニアの齊藤正明氏による対談、鈴・笛などを使用し、虫の声や羽音やイメージした演奏に定評があるバンド「星舟庭」によるステージなどが行われ、来場者は70人を越えた。
昆虫食を広める活動を積極的に行う内山氏と、今回の虫フェス主催者の永井尋己さんに、昆虫食の魅力について伺った。
「昆虫食の良いところは、美味しいところ。昆虫が美味しいということは食べた人にしか分からない。初めは恐る恐る昆虫料理を口に運ぶ人も、思いのほか美味しい昆虫の味に驚いた顔をする」と内山氏。「また、他の食材と同じように旬や食べごろがあるというところも魅力のひとつ。春にはカマキリベビー、夏にはセミ、秋にはバッタやスズメバチ、冬にはカミキリムシやクワガタの幼虫など、それぞれ旬の季節があり、四季を感じて楽しむことができる」。
日本では虫は厄介ものとして扱われることが多いが、さまざまな可能性を秘めていると話す内山氏。例えば、毎年害虫として大変な数が駆除されるスズメバチ。「味も美味しいし、必須アミノ酸がバランス良く含まれていて栄養価も高い食材。殺虫剤を撒いて処理してしまうには惜しい、今後有効活用できる可能性が十分にある」と語る。
また、食育の面でも昆虫食は大きな役割を果たす可能性がある。「昆虫は子供でも簡単に捕まえることができるので、昆虫を食材として捉えることができるなら、立派な食育材料となる。例えば、休耕田を網で覆ってイナゴを養殖し、家族でイナゴ狩りをするのも良い食育になると思う。それにイナゴは高タンパクで低脂肪であり、メタボ対策やダイエットにも効果的」と話す。
また今回の災害を受けて「一見突飛に聞こえるかもしれないが、非常用としても昆虫食は可能性ある食料だと考える。昆虫は周りを見渡すとどこにでもいるので、採集が容易。災害の発生に備え、たくさん採集できる季節にあらかじめ採って乾燥保存しておくのも有効だと思う。飼育が簡単な昆虫を非常時用に飼育すると食べ物が手に入らない状況になっても安心」と災害時における昆虫食の見直しを提案した。
永井さんは「昆虫を食べることに偏見を持たないでほしい。昆虫を食材として使う地域があることを知ってほしいし、多様性の一つとして昆虫食を認めてほしい。今回の虫フェスはそんな気持ちを込めて企画しました」と語ってくれた。
(工藤玲奈)