昨年の公式戦において、1年生で唯一先発メンバーに名を連ねたのがWTB(ウィング)児玉健太郎(環1)だ。

身長182センチの恵まれた体格で、50メートル走6秒の俊足。昨年の関東大学対抗戦で6試合6トライを記録したように高い得点能力を持つ一方、逆サイドまで走って相手を止めるタックルなど献身的なディフェンスも持ち味である。

1年生として申し分ない活躍。いまや慶大蹴球部に欠かせない存在となっている児玉は昨シーズンを「まだまだプレーヤーとしては未熟だが、今までのラグビー人生の中で一番努力し、成長出来た1年」と振り返る。

昨年3月中旬から約2週間の間、ラグビー高校日本代表の一員としてフランスに遠征。帰国してから数日後、地元の福岡県から上京して蹴球部の練習に合流した。「時差ボケが取れず、住まいも整わない状況で不安な日々が続いた」と語るように、多忙でコンディショニングが思わしくない中で学生生活がスタートした。

だんだんと環境に慣れ、ラグビーにおいても春シーズン、夏合宿を経て徐々に才能を発揮し、日体大戦で公式戦初出場を果たす。

この試合、主力の4年生が怪我をしたこともあり、控えメンバーに入っていた児玉。後半14分から出場し、2トライを記録した。14番の黒黄ジャージを射止めるきっかけとなったこの試合を、児玉は「途中出場で試合に出るからには、先発の座を取りたいという気持ちが良い結果につながった」と振り返る。

そして、ついに立大戦で先発デビュー。以後、先発の座を守り続けた。竹本(環4)、増田(環4)を中心に大学トップレベルの決定力を誇った慶大BK(バックス)陣の中で1年生ながらも堂々としたプレーを見せた児玉。

昨シーズンのベストゲームとして選んだのは、10年ぶりの勝利を掴んだ早大戦。「早大WTB中鶴選手をトライ寸前で止めたタックルが、自分でも評価に値する大きなプレーだったと思う」と早大との激闘を振り返る。

一方、昨シーズンの最終戦となった大学選手権2回戦の帝京大戦に関しては、「ブレイクダウンで圧力をかけてくる帝京大のラグビーをさせてしまった。実力が足りなかった」と悔しさを口にした。

児玉の他にも、早大PR(プロップ)垣永、帝京大FB(フルバック)竹田など1年生ながらも先発で活躍している選手がいる。同学年でのライバル意識について、「特に同じポジションの選手には絶対負けたくない」と闘志を燃やす。

先月18日、慶大蹴球部の新体制が発表され、3月から活動が本格的に始動する。新しいシーズンに向けての抱負として、「WTBとしてもっとトライを取って、キックの精度も上げる。自分が活躍して試合に勝ちたい」と力強く語った。

(塚本雅章)