「豊か、品がある、気が利く。そして教えやすい」
「最近の学生は~」。いつの時代も聞こえるこの言葉。学生を長年一番近くで見てきた教授たちは、最近の学生に対して何を思っているのだろうか。教授たちの本音を探ってきた。
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「慶大生は他大生と比べて書く内容も発想もつまらないかな」。学生に毎回作文を書かせる教授は読んでそう感じたという。彼は更に続ける。「最近の男は元気がないね。恋愛に関しても、主導権を持っているのはだいたい女で、男は相手任せ。慶應はそれが特に顕著だと思うよ」。やはり慶大生にも草食系が増えてきているようだ。
慶大生はあまり積極的に動かないという意見も多かった。SFCの某有名教授は「授業中に発言が少ない。もっと大胆になってほしい」と答える。別の教授も同じく「優等生的な真面目さはあるが、型を破ろうとするパワーをあまり感じない」と答えた。
学部内で評価が厳しいと評判の教授は、学生自身が授業を厳しく受け止めるべきだと言う。更に「質問に来ない。わざと分かりにくく教えると質問に来るんだけどね」と続けた。
文学部で英語を教える教授は、慶大生は頭がいいのに自信がない人が多いと話す。「日本のトップレベルの学生なのに誇りがない。在学生は社会に出たらリードしていくという意識が低いと思う」と話した先生もいた。
ここまでネガティブな評価が多かったが、ポジティブな評価も多い。真面目、授業を聞く、常識があるなど、他大で教えている教授を中心に評判が高かった。
変わり者と評判の某有名教授は「私をムカつかせる塾生はいない。臭い足をなでまわした手で握手を求められたりしたらびっくりするかもしれないけど。私をびっくりさせてみろ」と笑った。
他大から来ている別の教授は「慶大生は自分の将来についてすごく良く考えている」と評価。「経済的に豊か、品がある、気が利く。そして教えやすい」とベタ誉めした。
「慶大は当然のように遅延証明書をだしてくるような学生がいない。物を分かっているなと思った」、「大学内で大金の入った財布を落としたら、そのまま届いていて感動しました。慶應っていいな、と思いましたね」と慶應や慶大生への愛を話す教授たちも。
教授たちは「慶應は比較的恵まれた大学。それを使い切る前に大学生活が終わっている感じ。慶應は歴史があるから、『日本を作ってきた血』みたいなのを経験出来るはず」と言う。
大学での人間関係について「授業を受けに大学に来ているだけではつまらない。地元─バイト─授業(サークル)の三角形で大学生活が終わっている。大学=授業じゃない。大学には色んな世代や人がいる。それなのに授業やサークルだけの人間関係で終わるのはもったいない」という声もあった。
また、最近の大学生が「地元」という言葉を多く使うことに驚くという教授もいる。「地元>大学というイメージ。そんなに地元や高校の友達が好きなのか?と思う。『大学に入ったら大学の友人を作れ』と以前他大で言ったら猛反発を受け、意識の違いに驚いた」
就活についても「就活後を『戦後』と言っている慶大生がいた。まるで人生の戦後みたい。大学をもっと楽しんで欲しい」と話す教授もいる。
一方で、「大学生にもっと大学を満喫してほしいけど、大学を楽しめないのは結局のところ大学や社会構造の問題なのかもしれない」と、最近の学生に同情するかのような声も聞かれた。
多くの学生に対して講義をする教授たち。彼らは教え子たちに対していろいろと複雑な思いを抱えているようだ。
(大竹純平)