学生モータースポーツの頂点へ



ドリフト走行をしながらコーンの周りを回る競技者
ドリフト走行をしながらコーンの周りを回る競技者

慶應義塾體育會自動車部は今年11月に行われた全日本学生自動車運転競技選手権大会での優勝など、全10の大会で8つの勝利を手にした関東有数の強豪だ。自動車と聞くと一般の公道を走る、交通手段としての車を思い浮かべる人も多いだろう。自動車運転を競技とする自動車部の活動に迫った。
 自動車部は、学生モータースポーツの頂点を目指し、毎週火、水、木、土曜日に競技の練習、競技車の整備を中心とした活動を行っている。現在、部員17人で活動。例年より多い人数だという。
 活動場所は日吉キャンパスから少し歩いた自動車部専用練習場、通称「イタリア半島」。その名の通り、イタリア半島の形に似ているという理由から名付けられた広大な練習場では、公道ではお目にかかれないスピードで走行をする競技車や、トラック、ワゴンなど様々な種類の車が自由に走行している。
 「練習車は約15台、競技車2台と公道走行用の車を4台保持しています。車の購入費、競技用の車の改造、ガソリン代などもかかるので部員皆でOBの方の会社などでバイトをしたりもしています」と話すのは自動車部主務の文屋善貴さん(文3)。
慶應のスクールカラーである赤、青で大胆に彩られた競技車を見ると、車体を軽くするために運転席以外は全て取り外していたり、エンジンも特別仕様にしてあったりと一般車とは全く違った作りに改造していた。日夜練習場のガレージで整備をしているそうだ。
 「車の運転はほとんど皆が大学から始めるので、誰でも一番を狙えることが魅力。関東有数の高い技術力による整備やコーチをして下さるOBの方が支えてくれます」と文屋さんは語る。
また大会会場や各地の有名サーキットで行う遠征練習には全て部員が自動車を運転して移動。深夜に集合して関西や広島まで車で向かうこともあるそうだ。
 大会内容は、舗装道路で行われるジムカーナ、砂利道などの未舗装路で行われるダートトライアルといった走行タイムを競う競技と、車庫入れやバッククランクなどの運転技術を競うフィギュアという競技からなる。出場する選手の合計タイムで競うジムカーナ、ダートトライアルとフィギュアの得点を併せ、各競技の合計ポイントで全日本総合優勝が決まる。今年はタイヤ、オイルなどに関しプロに意見を求めたことや、一つのメーカーにこだわらずに様々な部品を試し、勝利に貪欲になったことが功を奏したという。
 文屋さんは、「6時間走り続ける耐久レースなどにも出場しています。やはり悪路を避ける技術や余裕、経験値が物を言います」と話す。
 これからの目標は、今年逃した全日本総合杯の優勝。勝利に向かって走り続ける自動車部から目が離せない。
(西村綾華)