「今季の慶大には絶対的なエースがいない」とチーム内外でそう言い続けられてきた今年度。慶大バスケットボール部にとって、まさに改革と模索の1年であった。
シーズン開幕となる関東トーナメントから、慶大は積極的に多くの控え選手を起用。出場選手が10人を超える試合も珍しくはなかった。
控え選手多用の傾向は、二ノ宮(環4)、岩下(総4)が相次いで戦線を離脱した関東バスケットボールリーグ戦で、より顕著なものとなる。
例えば、蛯名(法1)と金子(環3)が同時にコートに立つツーガードの型は、二ノ宮の離脱後度々用いられた言わば「奥の手」であった。また、岩下の離脱後は、ビッグマンの橋本(環1)をリバウンドに絞りワンポイントで起用するなど、1年生の活躍も目立った。
中でも、リーグ戦を通して目覚ましい進化を遂げスタメン定着を果たしたのが、ルーキーの中島(総1)だ。193㌢の長身ながらスピードに長け3Pシュートも得意とする、慶大には珍しいタイプの選手である。
同じく1年生の蛯名は、中島の成長について次のように語っている。「中島は大学に入るまで全国大会も経験していない無名の選手だったのに、どんどん吸収してくれて、一緒にやっていて楽しい」
また、シーズンを通して家治(環3)がエース級の選手に成長したのも、今季の慶大にとっては大きな収穫であった。「まだ波はあるが、1試合20点前後は計算できる選手になってきた」(佐々木ヘッドコーチ)
このように、控え選手の成長、新たなエースの台頭にチーム躍進の兆しを見出した今年度の慶大であったが、関東トーナメント、リーグ戦、インカレはいずれも準優勝。タイトルを手にすることはできなかった。
だが、「今季の慶大には絶対的なエースがいない」というチーム内の共通意識こそが、改革に繋がり、チームを優勝へあと一歩のところまで引き上げたのもまた事実だ。
来季は、二ノ宮、岩下、酒井(環4)の現4年生が抜ける。チームには更なる改革が求められる。今季頭角を現した新たな芽たちが、今度は主力としてコートの上に立つシーズンがやって来る。