「どんな学問でも、深く掘り下げるとほかの学問とどこかでつながっています」
衆議院議員の加藤公一氏の言葉。以前私が受講したある授業で教授が言っていた話と重なった。それは、学問を突き詰めた人が共通して気付くことなのかもしれない。
「あまり性急に成果を求めるのでなく、『学び』という行為自体を楽しむ気持ちでいることで、結果としてより多くのことが吸収でき、能力を高められ、それゆえの気付きがある」と加藤氏は語る。
大学卒業後8年余り、リクルート社に勤めていた加藤氏。毎日忙しく仕事をする中、ふと自分の給与明細を見て天引きされる税金や保険料は何に使われているのか、疑問を抱くようになった。そこで自分なりに調べると、 日本国中で無意味な事業に税金が投入されていることが分かり、怒りが込上がった。そして、この状況を自分の手で変えたいと会社を辞め、政治の道に飛び込む決意をした。
 だが、学生時代の専攻は医用生体工学という電子工学の一分野。学問領域としてあまりに政治とかけ離れていた為、体系的に法律の基礎を学ぶことにした。
 しかし、演説や挨拶回りなどの政治活動を全て一人でこなす生活が続き、まとまった時間を学問に割くことは、不可能だった。そこで、隙間の時間を利用して自分の裁量で学べる「通信教育」の門を叩いた。
 政治活動と並行し、多忙を極める中での勉強。ストレスのかからないような順序で勉強や読書を進めることや、逆にスケジュールに縛られすぎずに柔軟な対応をすることなど、タイムマネジメントの重要性を実感した。
そして法体系の全体像、条文の読み方解釈の手法、考え方など、法律を扱う際に最も基礎となる部分を得た。 
 国会議員の最も重要な仕事は、法律を作ること。そのためには法制度をどう設計すべきかがわかっていなければならない。  「通信課程で学んだ知識を土台として、現在の私の仕事が成り立っているといっても過言でないです」
 専門外の分野でも貪欲に知識を吸収する姿勢がなければ、質の高い仕事など出来ないと語る加藤氏。
 時間が経ったある時に「そうだったのか」と納得したり、無意識のうちに自分の身に染み込んだ思考力や分析力が、仕事をしている際に思わぬ形で活かされたりするという。
 「政治家の仕事は、毎日が『学び』の連続です」
どんなことでも深く掘り下げ続けること。通信教育を受講した時を経て、今もなお続いている。
       (曽塚円)
写真提供=加藤氏