「(負けたのは)やっぱり悔しい。後輩には来シーズンこそ連覇してほしいですね」
立大との20年ぶりの5回戦、明大決勝戦での逆転劇、早大との50年ぶりの優勝決定戦。数々の窮地においてもあらゆる面でチームを先導してきた闘将・湯本は寂しげに微笑み、ラストシーズンを終えた。
全15試合と、かなりタイトな日程となった今季。さらに今季はライバル早大のエース斎藤投手のラストシーズンでもあり、リーグ戦は例年より多くの注目をあびるかたちとなった。その中で慶大は「負けたら優勝可能性がなくなる」というピンチを何度もくぐり抜けながら「粘りの野球」というスタイルを築き上げ、最終的には斎藤率いる早大と天皇杯を争うことになった。
慶大野球部の秋季リーグは9月11日、東大戦から始まった。昨季リーグ戦覇者の慶大は快勝したが、なかでも特筆すべきは2戦目に先発した福谷投手の好投だろう。本人が「完封よりも嬉しい」と語ったのが無四球という内容だった。今季を通して毎試合後福谷が口にし続けてきたのが、制球である。その結果は5勝1敗、防御率1・32(リーグ2位)、ベストナイン選出といった今季の目覚ましい成績にも表れている。
同時に、今季は4年生が目覚ましい活躍をしたシーズンでもある。
春に打率1割9分1厘と低迷した渕上だが、今季は打率を3割6分2厘(リーグ3位)まで伸ばし、ベストナイン入りを果たした。守備の面では湯本と六大学屈指の二遊間を組んだ。明大第3戦や早大第3戦などでみられたように、ヒット性の当りをいくつも凡退にしたのは投手にとってかなり安心感を与えていたに違いない。
今季限りで、主力だった渕上、湯本、山口などの4年生は引退となるがいまだ慶大の選手層は厚い。
投手陣には2大エース福谷・竹内大をはじめ、神宮大会での勝利経験もある山形、そして150㌔以上の直球が武器の本格派・白村(商1)などがいる。
一方野手陣には、慶大不動の4番にして大学ナンバーワン打者との呼び声高い伊藤、そしてさらに強打者山﨑錬、伊場などが控える。
今年は連覇こそあと一歩のところで逃してしまったものの、来シーズンに向けて慶大はかなり好環境にあるといえるだろう。悲願の「春秋連覇」そして「大学日本一」を達成できるような常勝軍団慶應の誕生を期待したい。
(内田遼介)