大学生の約2人に1人が奨学金を借りる現在、奨学金返還時の問題が顕在化してきている。そのような中、株式会社アクティブアンドカンパニーは奨学金問題に目を向けて、奨学金代理返還事業である奨学金バンクをローンチした。今回は担当者の方へのインタビューを通し、事情について伺った。

〇:企業の方   ●:記者

 

〇社会人の一般的な収支ってご存じですか。

 

  • まだ、はっきりとは……。

〇社会人一年目の手取り相場は17万といわれており、そこから生活費などを引くと手元に残るのは1万円くらいなんです。そこから奨学金を返すとなると、生活に余裕はないため、学生のうちからマネープランを立てておく必要があります。今年から貸与型奨学金の利率も上がっているので、自分がどれくらい返さないといけないのかを知り、早めに対策することが求められます。

また、奨学金は原則本人が返さなければならず、誰かの支援を受けることは難しいんです。返済を滞納してしまうとブラックリストに載ってしまい、奨学金の返済が原因で自己破産してしまう人も一定数います。また、労働者中央福祉協議会のアンケートによると奨学金返済が結婚や出産、子育てに影響を与えていると回答した人が約4割もいたんです。こうした課題が解消出来たら、少子化の改善も期待できそうだと私たちは考えています。

 

  • かなり深刻な問題なんですね。ではこれらを踏まえたうえで、御社の奨学金バンクについて伺わせてください。

〇奨学金バンクとは、大学卒業後の奨学金の返済を支援するサービスで、私たちが紹介した企業に学生の皆さまが就職された際に、奨学金の一部を代理返還するというものです。日本学生支援機構、三井住友信託銀行との3社契約というスキームになっており、安心してご利用いただけます。特に、入社から三年間の、最も金銭面で苦しい時期の支援というのが魅力だと考えており、勤務を継続するほど支援も続きます。

 

  • 支援の条件はありますか。

〇まずは奨学金バンクの紹介する企業に入社するのが大前提です。あとは奨学生番号のわかる書類や個人情報などの必要書類の提出ですね。基本的には代理返還のできる奨学金団体のみが支援の対象になります。

 

  • 転職した際に、これまでの支援額を返す必要はありますか。

〇もちろん支援は止まってしまいますが、これまでの分を返す必要は一切ありません。

 

  • もし、奨学金バンクに希望する企業がない場合はどうしたらいいですか。

〇できる限りご希望に添えるように、奨学金バンクが直接ご希望の企業に問い合わせるなどの対応をさせていただきます。

 

  • 代理返還以外には、どのような支援がありますか。

〇就活の相談や、奨学金に関するお悩み相談も行っています。例えば、「返済時期を早めたい」といったご相談にも乗りますよ。

 

  • どのような企業と提携しているのですか。

〇三井住友海上といった大手からベンチャー企業まで、業種問わず提携しています。こういった制度に取り組む自治体もありますが、職種が限定的なことが多いようです。その点、自分の希望する職種を選べるのは、弊社ならではの魅力かもしれません。現在も参画企業を増やしている段階なので、今後さらに選びやすくなると思います。

 

  • このサービスを利用することで就職のしやすさは変わりますか。

〇手厚いサポートを提供しているので、内定がもらいやすいというメリットはあるかもしれません。また、企業側がこのサービスに登録していること自体を、金銭的な計画性を持つ人柄として評価することがあります。

 

  • 去年の三月から始めたとのことですが、現在の利用者数はどれくらいいらっしゃるんですか。

〇現時点では学生が1000名、社会人の方も1000名程いらっしゃいます。社会人の方でも転職の際にご利用いただけるサービスです。

 

  • この事業を始めたきっかけや、その意義について教えてください。

〇弊社代表の大野が、五年くらい前に奨学金返済者の方とお話をしたときに、奨学金の現状を知り、問題視し始めたのがきっかけです。昔は大卒自体が貴重だったので、こういう問題は見過ごされがちでしたが、今では大卒が当たり前の時代になり、この問題が表面化してきたんですね。これは、大卒を求める企業側にも問題があると感じており、そのため企業から何かしらの還元をしたいという思いが生まれたんです。

 

  • 社会問題に着目したビジネスなんですね。最終的な目標はありますか。

〇そうですね……。今、奨学金の貸付総額が9兆4000億円あるんですが、弊社で将来的におよそ1兆円くらいの返済を減らしたいと思っているんです。今、奨学金の返済をビジネスとして行っているのは奨学金バンクだけですが、いずれ競合も増えてくると思います。でもそれは、返済支援の輪が広がるということなので、結果的に奨学金を返済している方々の助けになればいいですね。

 

  • 質問は以上です。社会問題に焦点を当てて、ビジネスとして成立させた点に感銘を受けました。ありがとうございました。

〇ありがとうございました。

 

奨学金バンクの詳しい説明はこちらから

 

李涓在