読書の秋。慶應義塾大学日吉図書館で読書を推進する活動を行っている図書館フレンズは、塾生によるボランティア団体だ。これまで日吉の図書館職員と協力して学生目線の企画を数多く実行してきた。読書や図書館に対する思いや普段の活動について図書館フレンズの松元滉之介さん(商3)と前田凱史さん(政4)に話を聞いた。
〇選書ツアーや新フレンズ文庫など特色ある活動
図書館フレンズは毎年、選書ツアー展示を開催している。選書ツアー展示とは、図書館フレンズが実際に書店に赴き選んだ本が展示される企画である。この企画により毎年図書館では現役の塾生が欲している本が蔵書に加えられている。この選書ツアーの擬似体験をできるのが塾生選書。これは、利用者が図書館1階の指定資料コーナー前に設置されているカタログの中から自分が読みたいと思う本に丸をすると、職員が図書館の収集方針と照らし合わせ選定し、購入するという企画である。自分が読みたいと思う本がある塾生はぜひ参加してみてほしい。
読書をしたいが読みたい本がないという方にチェックしてもらいたいのが、季節ごとに図書館フレンズがオススメする本をまとめた小冊子である新フレンズ文庫。館内各所にあるので手に取ってみてはいかがだろうか。その他にも図書館フレンズは工夫を凝らした活動をしているので、知りたい方は図書館フレンズのウェブサイトを確認してみるとよいだろう。
〇読書が好きになったきっかけ
前田さんは慶大の付属高校3年生のとき、新型コロナウイルスによる高校の一斉休校を経験した。大学受験もなく時間が十分にあったため、ユーチューブで紹介されていたおすすめの本を読み始めたのが、読書に興味を持ち始めたきっかけだという。
松元さんが読書に興味を持ち始めたのは大学1年生のとき。日吉図書館で最初は漫画や雑誌、グラフィックの本などを読んでいた。次第に、日吉図書館を回って、面白いと感じる本を見つけては、それらを読むようになったと話してくれた。
〇普段関わることのない人とも読書を通じて交流
前田さんが図書館フレンズになったのは、大学1年生のとき。その理由として「読書は普通なら1人で完結するものだが、フレンズになれば自分たちのオススメの本を紹介し合い、みんなで読書を楽しむことができると思ったから」と語ってくれた。前田さんは、図書館フレンズの活動で印象に残ったことについて、選書ツアーで選んだ本をツイッター(現エックス)でツイートした時に作者の方がリツイートしてくれたことを挙げた。そのような自分だけで完結しない読書が、図書館フレンズの活動のモチベーションになったという。
松元さんはビブリオバトルの司会をしたことが 印象に残っているという。ビブリオバトルとはバトラーと呼ばれる参加者がそれぞれ本を紹介して、観客が最も読みたいと思った本に投票して優勝者を決める、知的書評バトルだ。日吉図書館で開催されるビブリオバトルには、塾生だけでなく教職員もバトラーとして参加する。普段は関わらない学部学年や年齢が異なる人たちが熱い闘いを繰り広げる毎年盛況のイベントだ。そのようなイベントを一番近くで体験できることも図書館フレンズの魅力だ。
〇世界が広がる、それが読書の魅力
松元さんは読書の魅力について、「新しい知識を得て、世界への関心が深まる」と話した。読書を通じて生活の中でいろいろなものに興味を持ち、世の中の仕組みが少し分かるようになることが楽しいという。また、商学部だがあらゆるジャンルの本を読むことで、さまざまな学問の知識が身につくとも語った。
前田さんは自分が生きているうちには普通は経験できないことを追体験できるのが読書の魅力だと述べた。歴史や哲学の本ならば過去を、SFならば未来を経験できるという。
〇図書館の魅力、濃密な知識と居心地の良い空間
図書館には、多くの分野の本を無料で読むことができるという大きな魅力があるが、図書館の魅力はそれだけではない。松元さんは、職員の方によって取捨選択された図書館の蔵書はどれも情報が濃密で読めば確実に役に立つと話す。また、図書館にはほぼすべての学問分野の本が基礎から応用までそろっているため、ある学問全体を幅広く知りたいときに役立つという。「インターネットで学問に関する情報を収集する場合、情報がカスタマイズされていたり、量が多すぎたりして学問全体を把握することが難しいと思いますが、図書館ではそれができます」
前田さんは、日吉の図書館の魅力として、多種多様なエリアがあり自分に合った場所で時間を過ごすことができることを挙げた。日差しが入り込み、1・2年の利用者が多いため、のんびりとした雰囲気の中で気軽に本を手に取って読むことができる。
今回のインタビューを通して、二人の読書に対する熱意や読書・図書館の魅力が分かった。次に日吉図書館を訪れるときは、図書館フレンズの企画に参加して新たな読書や図書館の楽しみ方を見つけてみてはどうだろうか。
図書館フレンズのウェブサイト https://libguides.lib.keio.ac.jp/hys_friends
図書館フレンズのX https://x.com/HiyoshiMedia
図書館フレンズのインスタグラム https://www.instagram.com/hiyoshi_media/?hl=ja
(狩谷東之介)