10月からの新連載「塾生自由寄稿」。

本企画は、既存の団体や著名人など、自己表現の場に恵まれている人々への取材に限定されていた従来の取材を見直し、全ての才能あふれる塾生が、創作物や哲学や思想などを自由に発信できる寄稿欄を新設するねらいだ。

記念すべき第1回は医学部医学科2年の金澤知大さんにインタビューし、作品の写真提供をお願いした。私立医学部最高峰である慶大医学部医学科に通いながら、さまざまな創作活動を楽しむ金澤さんの、熱意溢れる話を聞いた。

 

脇道を探す日々

金澤さんは福岡から上京し、現在慶大医学部に通う。幼いころから医者になることを強く望んできた一方で、「医学部に入ったら医者になる」という将来に、漠然とした違和感を覚えたそうだ。
「昔から特撮のヒーローに憧れていて、人を救いたいと思ってきました。だから、主軸は勿論医者がいい。その一方で、将来へのレールがはっきりしていることをつまらないと感じてきました。面白い脇道も探していきたいんです。中学の頃は『6時まで医者を開業して、7時から寿司屋をやろうかな』なんてことも夢想しましたね」長らくこうした悩みを抱え、勉学と並行して医者以外の可能性を模索してきた。

かねてより創作意欲と才能に溢れていた金澤さん。コロナ禍に遭った高校一年生の時には、活動できなくなった柔道部の仲間たちとともに、合成技術を用いたショートフィルムを製作した。詩作や絵にも興味があり、自主制作した1メートルほどの絵画は、今でも高校の校長室に飾られてる。また、ウルトラマンやガンダム、仮面ライダー等、特撮の大ファンであることから、自分用のライダースーツを一から製作することもあった。

 

自作のライダースーツに身を包む金澤さん①(写真=提供)

自作のライダースーツに身を包む金澤さん②(写真=提供)

 

約1メートルほどの自作絵画(写真=提供)

昨日の自分よりも今日の自分を

金澤さんのモチベーションは「昨日の自分よりも今日の自分を良くすること」。何もないまま一日が終わるのが嫌で、今を形に残そうと創作活動をしているそうだ。「考えてることってどんどん忘れてしまうと思う。何か作ってないと損かな」と語る。
好奇心旺盛で、創作活動だけでなく、知識の拡大にも情熱を注ぐ。興味をもった分野を見つけると、専門家に「詳しいね」と言われるほどまで探求したくなる。
自分の知る分野のグッズを集めることも、創作活動の延長であるという。
「最近は、押井守監督の『赤い眼鏡』に登場する『モーゼルC96』という格好いい銃に興味が出ています。この前丸善をふらふらしていたら、その銃が表紙になっている『深夜プラスワン』という小説を見つけて、今読んでいます。モデルガンが今度売り出されるみたいなので、ぜひ買いに行きたい。こんなふうに、気になったものを次々買い集めてしまうので、家が持ち物で溢れかえっていて地獄です(笑)」

 

医学雑誌での学生主体のコラム

金澤さんは今この瞬間の喪失へある意味では恐怖を覚えているのかもしれない、と語る。
時間の使い方が上手く、考えることが好きな友人たちと過ごす中で、自分だけでなく他の大勢の人々が抱える思考やアイデアを、形にして世に発信できる場を作りたいと考えた。
現在は、医学書院『総合診療』という雑誌で「学生のアトリエ(仮称)」と題するコラムを作ろうとしている。
医学部は大学間や同世代の繋がりが希薄で、医者や教授になった人々が卒業後になってようやく繋がることが多い。学生のうちから横のネットワークを築きたいと考え、専門的な医学の知識は学生の身分では難しくとも、創作物を通じて繋がりを深めることができるのではないかと考えた。慶大内だけでなく、インカレのような形で他大学にも声をかけている。人体解剖実習の御献体に対して行われる「慰霊祭」に関するエッセイや、それぞれの大学のキャンパス紹介なども盛り込んだコラムにしたいそうだ。
このメディアを作ろうという構想は、東宝シネマズ学生映画祭のインターンをしていた時に生まれたものだ。自主製作映画を取ったことはあったが、審査員の立場になるのはこの時が初めてだった。作り手と選び手、それぞれの立場を知ることができたそうだ。

 

憧れの赤

マルチな才能に溢れる金澤さん。多彩に活躍する人物に憧れたきっかけは、半世紀前のテレビ番組「快傑ズバット」にあると語る。たったひとりの超人的な主人公が、立ち向かってくる「日本一の達人」たちを、圧倒的なパワーで倒していく、というストーリーの番組だ。
「僕は『赤』でいたいんです。熱血で、何でもできる。特撮の主人公も赤。そういう漠然としたイメージを全部集めた『赤』が好きです。好きだから、インスタグラムのステータスメッセージにもつけているのですが、感覚的過ぎて分かってもらえないこともあります(笑)」

 

金澤さんは慶應ボーイコンテスト2024にも出場している。日々インスタ等で情報発信し、コンテストそのものを楽しんでいるそうだ。
在学中に「ライダー」になりたいと語る彼の夢は、自分の書斎に飾れるような、自分専用の変身ベルトを手に入れることだという。

 

金澤さんは慶應ボーイコンテスト2024にも出場している(写真=提供)

 

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倉澤輝圭