「能登地震は人工地震だった」「福島第一原発の処理水の影響で魚が大量死した」

このような情報をSNSなどで目にしたことがある人は多いのではないだろうか。これらは根拠のないフェイク情報だ。フェイク情報の拡散は世界中で大きな問題となっている。世界の政治・経済のリーダーが集まるダボス会議では、今後2年で世界が直面する最も大きなリスクとして、気候変動等を抑え「偽情報」があげられた[i]

そのような中、ゲームを使った教育でメディアリテラシーの向上に取り組む団体がある。謎解きゲーム「レイのブログ」を開発し、国内外の教育機関でメディアリテラシーの授業を行うClassroom Adventureだ。今年4月には慶大SFCのメディアセンターともコラボし、イベントを行った。

退屈な授業 変えたい

従来のメディアリテラシー教育の多くは、生徒が講義を聞くだけ。フェイク情報があふれるこの時代において、自ら情報の真偽を判断する力は必要不可欠なのにも関わらず、受動的な授業では生徒が退屈になりやすいため真剣に学ばない。また実際にフェイク情報を見分けるスキルが身につきにくいという問題点があった。「レイのブログ」は、謎の人物レイが残した様々な情報の中に隠された誤情報を、生徒が自分たちで調べながら探していき、レイの正体を暴くゲーム。実在しない架空のSNSの投稿やフェイクニュースを見つけながらレイの正体を明らかにしていく過程で、検索エンジンの効果的な使い方や写真に写る場所の特定方法など、フェイク情報を見分けるのに必要なスキルを楽しく実践的に身に着けることができる。

レイのブログを使った授業の一場面。生徒たちは検索エンジンを駆使し誤情報を見つけている

 

AI研修も楽しく

同団体が取り組むのは、メディアリテラシーの向上だけではない。現在は企業向けにAIの使い方を楽しく学ぶ研修を開発中だ。共同創業者の今井善太郎氏(総合政策学部3年)は「日本の人口が減少する中で、私たちはAIを大いに活用し生産性を高める必要がある。AIを楽しく学べるコンテンツを作ることで、AIを誰もが日常的に使うものにしたい」と話す。実際に、同団体では資料作成や画像生成、翻訳など様々な業務にAIを活用し効率化しているという。

「団体の目標は、あらゆる学びを楽しくすること」と今井氏。メディアリテラシーやAIなど、今必要とされている学びをいかに楽しく提供するか日々試行錯誤している。同団体は現在約10人で活動しており、新規メンバーも募集中だ。

Classroom adventureの共同創業者である代表の堀口野明氏(中央)、副代表の今井善太郎氏(右)と古堅陽向氏(左)

 

[i] 参照:NHK NEWS WEB「”『偽情報』が最も深刻なリスクに”『ダボス会議』前に報告書」2024年1月11日

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240111/k10014317071000.html

 

(山浦凜)