主に街歩きや巡検などの活動を行っている未公認学生団体「慶應地理倶楽部」が、今年3月「三田キャンパス1限マップ」を公開した。昨年制作された「日吉キャンパス1限マップ」に続く形で、X(旧Twitter)上でも話題を呼んだ。1限マップを制作した部長の舘恒太朗さん(経4)、副部長の藤井瑞起さん(商4)、部員の相沢亮太さん(商4)の3人に、1限マップについて、今後の活動の展望、地理の魅力などについて聞いた。
1限マップとは
キャンパスの1限に間に合うために、各駅を何時に出ればいいのかまとめたものを1限マップと呼んでいる。在来線限定で、時刻表をもとに手作業でデータをExcelに入力し、乗り換え時間の計算をしたものをGIS(地理情報システム)に読み込ませ制作する。もともとは他大学がやっていた企画を、慶應でもやってみたいと思ったのがきっかけ。日吉1限マップが好評だったことを受け、三田1限マップも制作するに至ったそうだ。
慶應地理倶楽部の普段の活動
主に巡検と呼ばれる街歩きを行い、その地域の歴史や地形、商業などへの理解を深めることを目的としている。最近では1限マップ制作など、地理にかかわる様々な活動にも取り組んでいる。
1限マップ制作の意義
自分たちの住んでいる地域が大学キャンパスとどのくらい近いのかという目線を持ってみてほしかった。既存の1限マップは画像1枚でしかなかったので、東京都心部において駅ごとの違いがよく分からなかった。Googleマップでも表示できるようにしたことで、自分の住んでいるエリアによりフォーカスして見られるようにした。地理愛好者には旅行好きが多く、その人たち向けのものでもあるが、一般の人にとっても価値があると思うと話す。
また、日吉1限マップ制作時に使用した「ArcGIS」というソフトは本来有料であるが、慶應生はライセンスを無料で利用できる。1限マップに限らず、地域ごとの様々な特性を表したいときに分析ツールとして使うことができる。ほとんどの学生が知らないと思うので、知るきっかけになれば嬉しいとのことだ。
1限マップが反響を呼んだ理由
そもそも1限マップ自体が他の大学などでも好評なコンテンツだった。地域差のようなものを地図で一目で分かる、というのは人々の興味を惹きやすい。また、自分の住んでいる地域が大学キャンパスとどのくらい近いのかという気付きを得て欲しいという狙いが上手くいき、地理愛好者だけでなく一般塾生の関心を引くことに繋がったのではないか。SNS上で目に留まりやすいように、あえてカラフルな色合いを使うなどの工夫もしたという。
今後取り組んでいきたいこと
慶應に絡めていえば、SFCの1限マップも作りたいと思っている。そのうえで、今までは手作業でやっていた乗り換え検索などを、API(作業を自動化することができるツール)を使って自動化したいそうだ。日吉キャンパスについてもAPIを使ってもう一度やってみて、手作業で行った時との違いを見てみたいという。
また、慶應内の他団体との交流を増やしたいと思っていて、例えば、考古学研究会というサークルと合同で巡検を行うことや、地理やデータサイエンスに関わることをやっている研究会と協力して、1限マップと住宅価格を組み合わせた「慶應生1人暮らしマップ」のようなものを作りたいと考えているそうだ。
部誌を作ったり、3Dプリンターで都市を再現したり、部員の興味のあることで地理に関係するものであれば様々なことにどんどん取り組んでみたいと話す。
慶應地理倶楽部メンバーの考える地理の魅力とは
まず、①地域差に関係する②人の営みと関わる、という2つを満たしていれば、地理学かはともかく地理と呼べるものだと思っていて、その大雑把な枠組みの中で様々な人がバラバラな分野の興味を持っている、という多様性こそが魅力だという
また、地理とは、人の生活の営みの結果のようなものであり、それを自分なりに解釈して新たな発見を得られる面白さがある。普段の生活の中でバスや電車に乗ったり何か買い物をしたり、そういったささいな行動も何かしら地理に結びついている。地理とは、人間の生活に何よりも身近なコンテンツであり、自分たちの生活を考えるうえで役立つものだと思う、と3人は熱く語った。
慶應地理倶楽部が存在する意義
福澤諭吉の『学問のすゝめ』の序盤において、実は経済学や歴史よりもまず地理学という言葉が最初に出てくる。わざわざ最初に地理学を置いた理由は今でこそ分からないが、福澤先生の教育理念のもとにある慶應義塾だからこそ、地理倶楽部という場所をこれからも残るきちんとしたものにしたいという。
設立してからまだ2,3年の慶應地理倶楽部だが、順調にメンバーも増え活動も活発になってきている。いろいろな形で活動の輪を広げていきながら、地理について学んだり交流したい人たちが集まれるような場所を目指したい、と3人語った。
(稻山昂大)