6月から本格化する就職活動。個別面談や集団講義、エントリーシ―トの添削などを通して、就活生の内定獲得を支援する「就活塾」や「就活セミナー」を利用する人もいるだろう。
気を付けなければならないのは、不安や焦りに付け込んで就活生に不利な契約を迫る悪徳就活ビジネスだ。
悪徳就活ビジネスに騙されないためにはどうすればいいのか。慶大学生部就職・進路支援の担当者に話を聞いた。
「悪徳」基準は5つ
「悪徳業者」の基準は法律で定まっているわけではない。以下の5点のうち、1つでも当てはまったら「悪徳」と言える。
①目的不明、身元不明のアンケート調査で個人情報を抜き出す行為
②執拗な勧誘
③即座に契約を迫る行為
④不明瞭な契約内容
⑤解約を受けつけない態度
「あなたのエントリーシートでは絶対に内定が出ない」などと過度に不安をあおる言葉で入会を迫ったり、相場の倍以上の学費を設定していたり、高額を一度に請求したりする場合も、「悪徳」の可能性が高いという。
慶大生「一生懸命塾」で被害
慶大で起こった具体的な事例を紹介する。
2018年「一生懸命塾(株式会社もとい)」に入会した日吉の学生が、複数の学生に悪質な勧誘を行った。不審に思った友人が大学に報告して発覚した。
また、2023年には三田の学生の家族から「就活も勉強もせず、無償で農作業をしている」という報告があった。この学生も、「一生懸命塾」と同様の「株式会社もとい」が運営する就活塾に入会していた。「もとい」は執拗な勧誘行為が問題視され、2020年に東京都から業務停止命令を出されている。
入会先がこのような悪質な団体であっても、大学等の助言を素直に聞き入れ脱退してくれるケースは多くないそうだ。
「お節介でも相談」友人、知人が巻き込まれたら
紹介した具体例からも分かるように、本人が自力で悪徳就活塾から離れることは極めて難しい。友人、知人の様子がおかしいと感じたら、
①お節介でも就職・進路支援担当に相談する
②国民生活センターのホットラインを活用する
などの対応が必要だ。
就活生が悪徳ビジネスの被害に遭いやすいのは、家族や友人、大学との関係が希薄になった時だという。
就活の不安や焦り、プレッシャーから孤独に陥ると、物理的にも精神的にも居場所を求めてしまう。そこに、お金と引き換えに居場所を提供する悪徳ビジネスが付け込んでしまうのだ。
自分を孤独に置かず、頼る先を複数持っておくことが何よりの対策になる。学生部担当者は「学生に怒ることはありません。被害を受けたらすぐに頼ってほしい」と話した。
慶大 声掛けなどで対策
慶大ではキャンパス内の怪しい勧誘行為に声掛けをするなど、積極的にパトロールをしてきた。対策の徹底により現在表立った勧誘行為は見られなくなってきているという。また、弁護士を呼んだ労働法セミナーなども開催し、危険な企業・団体の見極め方について講義を行っている。
「就活アプリ」でも被害
近年、立命館大学からは就活サポートをうたうアプリでの被害が報告されている。課金のしやすさや気軽さから、騙されやすいので注意が必要だ。
【注意喚起】就職活動への不安につけ込む就活ビジネスへの執拗な勧誘にご注意ください。 | NEWS | キャリアセンター | 立命館大学 (ritsumei.ac.jp)
クーリングオフを知ろう
もしも悪徳就活塾に契約してしまった場合にも、クーリングオフが利用できる。クーリングオフとは、契約の申し込みや締結をした場合でも、一定期間は無条件で撤回したり、解除したりできる制度だ。就活塾であれば、8日間はクーリングオフを利用できる。
クーリング・オフ(テーマ別特集)_国民生活センター (kokusen.go.jp)
就活のプレッシャーは学生にとって非常に厳しいものだ。その苦しみに付け込まれないよう、何かあればまずに大学を頼る選択肢を持とう。
(飯田櫂)