4月21日、春の隅田川で第93回早慶レガッタが開催された。

本大会に出場した慶大端艇部・主将の竹峰颯健さんに取材した。

主将らしい堂々とした態度でインタビューに応じ、朗らかで頼りがいのある人柄を見せた。大会への熱い思いを語ってくれた。

隅田川で力強い漕ぎを見せる慶大端艇部(写真=撮影)
スローガン「傑出」を掲げて

 

竹峰さんによると、チームは「傑出」というスローガンを掲げ日々練習に励んできたという。傑出とは、飛び抜けて優れていることを指す。由来について、慶大端艇部は他大学に比べて強みがないこと、なかなか決勝で勝てないことが悩みだったと語る。「自信を持ち、日本一になること。それを何よりも目標にしました」

スローガンにより部員は自分の強みとなる部分を発見し、磨き上げていくことができたそうだ。

早慶戦へ向けた本格的な準備は昨年9月から。出場メンバーは2月頭に決定し、日々厳しい練習に励んだ。週10回、1日2回、集中してボートに乗る。体力をつける地道な基礎練習はもちろん、スポーツマンシップの講習や、スポーツ用品の研究にも取り組み、勝利に向けて細かい部分までこだわった。

ボートは主に荒川で練習したという。早慶戦の行われる隅田川との違いについてこう語った。

「荒川は比較的水面が安定していますが、隅田川は違います。川幅は狭いですし、運搬船や観光船がよく通っているので、そのモーターで水面が荒れています」

隅田川はボート界隈ではおそらく最も難しい場所だという。

また、相手の早稲田大学はスポーツ推薦者の多い強豪。手ごわい相手だと語る。

慶大端艇部主将・竹峰颯健さん(経4)(写真=提供)
「絶対に日本一になる」 譲れない思い

 

竹峰さんは高校生からレガッタを始めた。

初めてボートに乗った時の感動をこう話す。「実際にボートに乗って風を切る感覚が素晴らしい。『水上ってこんなに早いスピードが出るんだ』と思い、強く惹かれていきました」

 

「仲間と何かを成し遂げたい」という思いが人一倍強かったという竹峰さん。

「ボートは完全に動きをシンクロさせなければ進まない。全員が頑張らなくては成り立たない。一体感がとても大切なスポーツです」

 

慶大端艇部は60人弱のメンバーが所属し共同生活を送っている。

日ごろから寝食を共にする仲間は家族以上に家族のように感じられるという。その親密さがレガッタに必要な一体感を育てている。

 

竹峰さんは主に「エイト」と呼ばれる、いわゆる花形種目で活躍している。

エイトとは、9人乗りのボートだ。竹峰さんは進行方向から数えて7番目のポジションを取る。8番目の選手とともにボート全体のリズムを作る重要な役割だ。主将としてほかのメンバーを力強く温かく支えている。

 

竹峰さんは自分の性格についてこう分析する。

「とにかく熱い人、ではないでしょうか。入部した時からずっと日本一になるんだと公言していて、目標を譲っていません。そのために今日の日まで取り組んできた自信があります」

 

最近見た映画は『ハイキュー‼』。スポーツマンとして、仲間とともに勝利を成し遂げる者として、共感できる部分があるという。

試合前に聴く音楽は『心絵』。アニメ『メジャー』のテーマソングだ。

「このアニメは、野球に打ち込む一人の熱い男の話なんです。長い間スポーツ人生を歩んできた身として、そのひたむきさを格好良いと思います。『心絵』を聴くと自分の中で気持ちが奮い立ちますね」

 

就活中だという竹峰さんは、将来新興国の発展事業に携わりたいと考えているという。

中学生のころ過ごしたイランでの経験をこう語る。

「イランでは食べ物が当たり前に食べられないとか、仕事したくてもできないとか、そのような人々を目の当たりにしました。私はイラン人にすごく親切にしてもらったので、自分のできることで恩返しがしたいと思っています」

好きな食べ物を聞くとラーメンや寿司とともにイラン料理を挙げ、ラム肉を中心とするハラルフードの豊かさを語ってくれた。

 

「紳士のスポーツ」レガッタ

 

新歓の時期にも重なった今回の大会。

レガッタの魅力について「『紳士のスポーツ』と呼ばれるくらい、上品で歴史の長いスポーツです」と力を込めて話した。また、端艇部の試合は各慶大體育會のトップバッターを務める。自分たちの勝利で他の試合をも盛り上げたいと語った。

スポーツ推薦を取る早稲田と異なり慶應は未経験者も多数在籍しているという。学部や出自がばらばらでも、ボートによって一体感を得るという慶大端艇部。

「未経験からでも大舞台で活躍できる可能性を秘めています。ぜひ端艇部に来てください」と新入生にアピールをし、インタビューを締めくくった。

飯田櫂