二月三日は節分である。恵方巻とは「恵方に向かって丸かじりすると願いが叶う」とされる、縁起の良い太巻き寿司だ。
しかし懸念されるのは、この恵方巻をめぐる「食品ロス」である。食品ロスとは、本来食べられるのに破棄されてしまう食品を指す。ロスは、製造工場での規格外食材の発生、店舗での売れ残り、家庭内での食べ残しなどで生じる。
コンビニやスーパーで余った恵方巻が大量に捨てられるショッキングな映像が、毎年報道されている。
そんな中、目に留まったのはローソンの販売する「もったいない穴子刻み恵方巻」である。「もったいない」とは、規格外食材を利用した商品であることを指す言葉のようだ。
食品ロスは一朝一夕で解決する課題ではない。売り手も買い手も共に問題意識を持ち、少しずつ改善していく必要がある。だからこそ、食品ロスへの取り組みを消費者にアピールしている商品は興味深い。
食品ロスに企業はどう向き合っているのか。消費者はどの様に行動すべきなのか。ローソンに取材した。
「恵方巻」だけでなく、日々のロスに注目を
恵方巻は「消費期限が短い」「販売時期の限られた季節もの」という点で、食品ロスになりやすい。節分が過ぎればほとんど売れなくなってしまう。
しかし報道でのイメージに反して、ローソンでは恵方巻でそれほどのロスは出ていないそうだ。予約販売と適正な個数での当日販売の効果だという。「恵方巻=食品ロス」というイメージは性急のようだ。
実は、恵方巻は「食育」の面で、食品ロス削減に期待の持てる食品と言える。食育とは、健全な食生活を送るため、食に関する知識を付ける教育のことだ。
「食品ロスの主な要因のように言われますが、恵方巻、おせちなどの季節商品は、日本の食文化を伝える意味で重要です。ほかの食品に関しても「旬」を大事にした商品開発を通して、日本独自の季節感をお客さまにお届けしたいと考えています。こうした催事商品が食材を大切にする「食育」の一助となることを期待しています」
食文化を豊かにすることは、消費者の意識の向上に繋がり、家庭などでの食品ロス削減に貢献できそうだ。
「もったいない」商品 売れ行き好調
冒頭に示したように、ローソンは食品を加工した際の端材や規格外食材を利用した商品を「もったいない」と冠して2022年、2023年に「もったいないおせち」、2023年に「もったいない!海老カツ恵方巻」を販売している。また、ロールケーキの端材を利用したクリスマスケーキの「ティラミス」などの商品も発売している。
大量生産ができない為、数量限定・販売エリア限定での販売だったが、好評だったそうだ。そして今年は「もったいない穴子刻み恵方巻」の予約販売を行っていた。
こうした商品は、一般の商品を作る際の端材などを使用しているため、大量に製造できるわけではない。しかし、食品ロス削減に貢献しつつ、品質は他と変わらない商品として、消費者から根強い支持を得ているそうだ。
発注適正化のカギ AI
商品が売り切れないほど多いと食品ロスが生じるが、消費者の欲しいときに欲しいものがそろっていなければ、当然コンビニとしての役目を全うできない。
そのため発注の適正化が課題だ。ローソンは2015年からAIを導入しているという。
店舗ごとの販売データを天候や地域、人流の増減などの情報で解析。そこから、適正な発注数や、値引き販売のタイミングや値引き金額を勧めてくれる。
2024年度には、次世代発注システム「AICO(アイコ)」を本格導入する予定だ。
これらのシステムは、店舗ごとの在庫量を把握するのに役立ち、値引きにより廃棄する商品を減らすだけではなく、商品の欠品も防ぐそうだ。最新技術が課題解決のカギとなっている。
フードバンクとの連携
食品ロスは「フードバンク」との連携により、貧困問題と同時に解決が図られる。フードバンクとは、やむを得ず食品ロスとなったが、十分な商品価値を有する食品を、児童養護施設、障害者福祉施設、ホームレス支援団体など、必要な人に無償で届ける取り組みの事である。ローソンでも、毎月定期的に地域ごとのフードバンクや子ども食堂へ食品を提供している。
これらの取り組みに関してローソンは「食品ロスとなっているもののうち、本来十分に食べられる食品は有効活用する。誰かれ構わず渡すのではなく、まずは支援を必要としている方からお届けする。そのため、フードバンクとの連携は強化する予定です。国内企業の食品寄贈を推進するため、法整備の政策提言も積極的に行っていきます」と語った。
コンビニとは、全国約60,000店舗という巨大マーケットであり、我々のインフラである。経済面だけでなく、社会貢献の面でも可能性を秘めているのだ。
ローソンのグループ理念は「私たちはみんなと暮らす“マチ”を幸せにします。」というものだが、企業独自の社会問題解決力は、食品ロスのみならず、さまざまな面において発揮されることを期待できる。
「てまえどり」 すぐできる取り組み
我々消費者が今すぐできる、食品ロス削減はなんだろうか。
例えば、大手コンビニ四社を含む小売店では、「てまえどり」の呼びかけを行っている。コンビニの緑色のポップを見た事のある人は多いだろう。
てまえどりとは、購入してすぐに食べる場合に、商品棚の手前にある商品等、販売期限の迫った商品を積極的に選ぶことだ。販売期限が過ぎて廃棄される食品を削減する効果が期待される。
買い物のとき、つい消費期限、賞味期限の長い奥の商品を取ってしまうかもしれない。しかし、食品ロスの削減のためには手前の商品を取ることが大切だ。特に、おにぎりやサンドウィッチなど、すぐに食べる商品は「てまえどり」が推奨される。
食品ロスは、企業、消費者が双方向で解決していくものである。消費者の行動は企業が制限、強制できるものではない。だからこそ一人一人が、問題解決の主体となるよう意識することが不可欠だ。
食品ロスを取り巻く現状と、解決への努力を知り、明日からでも意識した消費行動をとってはいかがだろうか。
(飯田櫂)