「文学部専攻企画」では、史学系の各専攻について1年生が参考にできる情報をまとめている。西洋史学専攻の教授である赤江雄一先生に、専攻についてお話を伺った。
── 西洋史学専攻と、研究分野が似ているほかの史学系専攻との違いは?
概して、同じ方法論を採る専攻としては東洋史学、日本史学が挙げられる。民族考古学は、東洋史学、日本史学、西洋史学とは扱う方法論が少し異なる。
東洋史学、日本史学、西洋史学のあいだでは、扱う地域はもちろん、言語も様々に異なる。東洋史でもおそらくそうだが、特に西洋史学では、一歩踏み込んで研究しようとすると言語が日本語ではなくなってしまうため、第二外国語の選択は一つのポイント。西洋史学専攻では、3年生になると、必修科目の「演習」で英語以外の欧米言語を使うことになるが、中国語や韓国語では履修できないため、これらの言語を現在学習している人はさらに別の欧米系の言語を学ばなければいけない。もちろん、それを承知のうえで西洋史学専攻に進む学生もいる。一方、西洋史に関心があっても、特定の国の文学や言語のほうにより関心がある場合は、独文学や仏文学、英米文学専攻などの選択肢も考える必要があるだろう。特定の言語にたくさん触れたいのであれば、西洋史学専攻よりも各文学専攻のほうが適しているかもしれない。
── その専攻を志望する学生に期待すること、求めることは?
もちろん、欧米で起きている事象に関心があること。過去のことはもちろん現在のことにも関心があるとベスト。単に関心があるというだけでなく、本を借りて読むからでも、その関心をもう一歩深められる行動がとれると良い。
── 学生の興味関心は一人ひとり異なるが、どのように対応しているのか?
歴史には古代から現代まであるうえ地域もさまざまで、教員それぞれに専門分野があるため、もちろんすべてを網羅できているわけではない。とはいえ、各教員はその専門のみに限定して卒論指導しているわけではない。また、2年生秋におこなわれるゼミ選択の際には、ゼミ説明会で、そのゼミで扱える領域等については説明がある。また、各ゼミ内では学生の関心に合わせて個別的な指導をおこなっている。学生が興味関心を持つトピックで、最初にイメージしたような卒論になることは少ない。そのトピックについて調べるうちに、少しずつ関心が絞られ、できることがどの程度のことかもわかってくる。強い興味関心があっても適当な史料がないなどで、卒論では研究できない場合もある。だから学ぶうちに出会うものへの柔軟な関心が必要。
── その専攻で学んだことを活かせる進路にはどのようなものがあるか?
様々なところに活かせる。歴史学では、当時の人々が書き残したものを読んでそれをどう読み取るかということや、当時の文脈の中でどのように理解するか、というようなことが重要。そのため、人の話を聞いて文脈を理解・想像するだけではなく、調べて最終的に書く・発表する、というコミュニケーションスキルも養われるので、幅広い文系的な仕事に役立つと言える。卒業生の進路は多岐にわたっていて、教職などだけでなく、コンサル、調査系、インフラ系の会社などの就職例も多くある。
── 歴史を学ぶ意義とは何か?
歴史を学ぶ意義は、現在と今過去に驚くようになれること。つまり、今の世の中の当たり前が当たり前ではなかったと見られるようになること。そこから、新しい発想も出るようになる。
史学系の専攻は、どの専攻に進むべきか判断に悩む塾生も多いだろう。この記事が自分自身の興味に合った専攻を見つける一助となれば幸いだ。
(関根裕生)