「経済学部ゼミナール委員会主催講演会~日本は何処へ~」が先月14日、三田キャンパスで行われ、たちあがれ日本の共同代表である与謝野馨氏が講演した。第1部では与謝野氏が財政の仕組みを解説。第2部では、与謝野氏と経済学部の吉野直行教授がパネルディスカッションを行った。 (大竹純平)
第1部で与謝野氏は「所得移転が財政の基本である」とし、日本の借金が膨らんだ理由を「税に見合わないだけのことをしてきたから」と話した。
与謝野氏は、一般的には公共事業が財政を圧迫したと捉えられがちだが、実際に財政を悪くしているのは社会保障費であると現状を分析する。日本の歳入の多くは国債費、地方交付税、社会保障費が占めており、残った約30%がそのほかの政策に充てられている。このうち社会保障費は、毎年約1兆円ずつ増加しているという。
また与謝野氏は「国と国民は財政的には同じ」と語り、国家財政と国民生活は密接に関係しているということを主張した。例として欧州中央銀行が財政危機に瀕したギリシャに対し、支援の条件として増税や民営化などの要求をした際、ギリシャ国民がそれに反発し暴動を起こしたことを挙げ、国の財政が危機になると結果的に国民にも影響するということを説明した。
与謝野氏は「一体どういう国がいいのか、を考えてもらいたい」と語り、福祉と個人負担率をどの程度の水準にするか考えるべきだと主張。「中福祉・中負担」を維持すべきだとした。
第2部では、経済学部の吉野直行教授の質問に与謝野氏が答えるという形式で、パネルディスカッションを行った。
与謝野氏は高齢化対策について、「日本の人口構造が変化していることに着目しなければいけない」とし、根本的な解決としては高齢者や出産後の女性が職場に戻ることが重要だと語った。
教育・人的資源については、「(他の国の)猛烈に勉強して一生懸命やっている人たちが本当の競争相手」と語り、その意識を持つべきだと訴えた。
日本経済が食べていくための新たな産業については、形ある製造業だけでなく、デザイン、建築、アニメ、ファッションなどの芸術的な産業に注目した。その他製薬業や先端医療など、形のない産業も重要だとした。
与謝野氏はたちあがれ日本の共同代表。衆議院議員。自民党時代に文部大臣、内閣府特命担当大臣、内閣官房長官、財務大臣などを歴任した。71歳。