森山さんも学習ボランティアとして活躍する
森山さんも学習ボランティアとして活躍する

児童施設にボランティア派遣

「学習遅れ改善し、子どもに自信を」

「どうせ私には無理」。できない問題があるとそう繰り返す児童養護施設の子どもたち。当時、児童養護施設でボランティアをしていた森山誉恵(政4)さんにとって聞き捨てならない言葉だった。
学習の遅れが子どもの自己肯定感を奪っていることに危機感を覚え、昨年、児童養護施設に学習ボランティアを派遣する団体「3keys」を立ち上げた。
児童養護施設では何らかの理由で家族と暮らすことができない子どもたちが生活している。特に、最近は虐待が施設に入所する理由の約9割を占めており、心の傷が深い子どもも多い。
森山さんが児童養護施設に出会ったのは大学2年生の秋。それまで大学生活の大半を注いでいたビジネスコンテストが終わり、改めて自分にできることは何か考えていたとき、偶然施設のホームページを見つけた。自分が育ってきた環境とはあまりにも異なる施設の存在に衝撃を受け、さっそく学習ボランティアとなった。
ボランティアを始め、子どもが学習する環境が整っていないことを実感した。施設では6人の子どもに対し、1人の職員がつくが、勉強まではなかなか手が回らない。入所するまで不安定な精神状態で勉強どころではなかった子どもも多い。忙しい職員に代わり、学習ボランティアと子どもたちをつなぐ決意をした。
「3keys」の活動を始め、驚いたのはニーズの大きさだ。施設からの新規依頼が殺到しており、やりがいにつながるという。一方、「気持ちだけではやれない」とも感じている。子どもはすぐに勉強ができるようにはならないし、心も開いてくれない。ボランティアの負担が大きい割に無償という点に問題を感じており、継続的な支援のために、何らかの付加価値をつけることが今後の課題だ。
学習遅れの改善に力を注ぐ森山さんだが、「子どもたちの進学率を上げたいわけではない」という。自分が本当にやりたいことであれば進路にはこだわらないが、「学習を通じて『自分もやればできる』ということを感じてほしい」。子どもたちが自己肯定感を高められるような指導を目指し、ボランティアへの研修も検討しているという。
活動を通じ「子どもに『私、慶應に通ってるんだよ』と言っても何の意味もなさない」と強く感じた。「人間関係において大切なのは肩書や学歴ではなく、内面が輝いているかどうか」。来年、慶大を卒業するが「3keys」をNPO法人化し、本業として続ける覚悟だ。「学生のみなさんへ、社会に出る前に、これまで知らなかった社会を知るきっかけ作りができたらと思っています」。
(西原舞)

児童擁護施設の学習情報はこちらから。
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