9月23日、24日に行われた矢上祭。前日の大雨により当日の天候が心配されていたが、 天気は曇り、過ごしやすい気温であった。来場者の多くは地域の方々で、小さな子供も多く楽しそうな声が飛び交っていた。

矢上祭当日の様子【写真=提供】

矢上祭の催し物は理工学部ならではの展示が多く見られた。体育館で行われた「やがみ科学館」は、玄関が小さな靴で埋め尽くされており、そこから進むとスライムや人工イクラの作成や巨大シャボン玉の中に入る体験ができる。家族連れの来場者が科学に触れて楽しんでいた。 他にもウサギ、ニワトリといった小動物にエサを与えて触れ合うことのできる「あにまるずー」、プラネタリウムを体験できる「天文企画」など、実際に体験して大人も子供も楽しむことのできるタイプの展示が目立った。また、グラウンドには縁日があった。特に多くの人が集まっていたのは屋台の通りであろう。ここでは、サークルや理工学部1年生のクラスが有志で出している模擬店が並んでいた。焼き鳥や韓国料理、麻婆麺などさまざまなバリエーションの食べ物を目当てに多くの人が列を成していた。

今回は本格的にコロナ禍が明けてから初めて開催された矢上祭であった。そこで今回は矢上祭の開催にあたり、矢上祭実行委員会委員長の丸谷祐晟(理3)さんにインタビューし、矢上祭への思いを聞いた。

矢上祭実行委員会の皆さん【写真=提供】
——今年度のスローガン「next stage」に込めた意味や矢上祭にかける思いを教えてください。

昨年からコロナによる制限がなくなり対面実施ができるようになりました。今年はそこからもっとレベルアップした矢上祭を作り上げたいという思いで「next stage」というスローガンに決定しました。実行委員を含め、対面での矢上祭を知らない世代がほとんどなので、今後の矢上祭をどうしていくか委員長として考え、後輩に種まきする役目も担いたいと思います。

 

——矢上キャンパスは理工学部だけのキャンパスですよね。他の三田祭、七夕祭とは違った特徴はあるのでしょうか。

今年からの新しい取り組みとして、理工学部1年生のクラスごとの出し物を取り入れました。より多くの理工学部生に楽しんでもらうだけでなく、七夕祭や三田祭とは違った色を出せれば良いなと思っています。クラスの出し物以外にも、小さな動物を集めて触れ合える動物園を作るなどの理系企画を行っています。理系の人はもちろん、文系の人、さらに年齢の幅を超えて誰でも楽しめる、気軽に理系に触れることができる企画がたくさんあります。

 

——矢上祭に向けて準備していく中で、実行委員全体で意識していたことはありますか。

1番は矢上祭の認知度を高めることです。矢上祭には「認知度が低い」という最大の問題があり、それは理工学部でも知らない人がいるほどです。そのため今年からクラスの出し物を取り入れ、1年生に参加する側になってもらうことで認知度を上げました。また、一般の広報活動も行うことで受験生への認知度も上げることができるよう努めました。

 

——委員長として大変だったことはありますか。

企画の最前線に立って行動するというよりは、全体をまとめる仕事がどうしても多くなってしまいます。そんななかで、「この矢上祭全体をどのようにしたいのか」というビジョンや意図を明確に考え、他の幹部やスタッフに伝えることが必要です。また、学園祭という大きなイベントで大学のキャンパスを使うというのは学生の力だけではどうにもできず、学生部の方や外部の方々との話し合いや交渉の場面も多くありました。大変ではありますが貴重な経験をさせていただいていると思います。

コロナ禍以前に行われていた飲食企画の復活や来場者制限の撤廃などはまさに「Next Stage」というテーマにふさわしい、活気を取り戻したものだったと言えるだろう。多くの体験型の展示を通して、慶大と地域の方々との交流を見ることができる、笑顔溢れるイベントであった。

佐藤心蘭関口絢音