8月17日から18日にかけて、「KEIOサマースクールフェスタ2023」が日吉キャンパス協生館で開催された。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(以下、KBS*)の「起業体験」という授業の一環として企画・運営されている本イベントは、屋台やワークショップなどさまざまな出店をKBSの学生が運営する。4年振りの開催にもかかわらず、来場者は過去最大級であったという。本イベントの実行委員会委員長である山本興陽さんに話を聞いた。
「ゼロ」からのスタート。広報活動にも注力。
−−コロナ禍を経て4年ぶりの開催となりました。イベントに向けてどのように準備しましたか。
4年前の先輩たちはもうKBSを修了しており、イベント運営のノウハウが全くない、「ゼロ」からのスタートでした。4年も間が空いてサマースクールフェスタのことを知らない方々も増えてしまったので、ビラ配りなどの広告活動に加えて、実行委員会委員長として広報活動に力を入れました。
私はKBS入学前に、記者をやっていたこともあり、記者の気持ちがわかります。本イベントのプレスリリースを書いて記者クラブや地元メディアに売り込みをしてみました。その結果、多くのメディアで取り上げて頂き、サマースクールフェスタについて多くの方々に広く認知していただけたと思います。実際にご来場された方々からも、「ネットニュースでイベントのことを知った」という声を多く聞いたので、広報活動の成果もあったと感じています。2013年から本イベントは開催していますが、今年は4年ぶりであったにもかかわらず、過去最大級の来場者数という結果も残すことが出来ました。
また、メディアに取り上げられることで、本イベントに携わるKBSメンバーのモチベーションが上がることも意識していました。
−−準備を通して、個人として大変だったことは。
今回の企画運営には、KBSだけでなく他研究科の学生も参加していました。彼らはこのイベントだけでなく、自分が所属する研究科の学びと両立させる必要があります。また、働きながら運営に参加する社会人学生もいました。多様なバックグラウンドを持つ学生が集うことでシナジーが期待される一方、どのようにマネジメントするか試行錯誤しました。
チケット完売続出。感じた手応えと課題点とは。
−−当日のイベント運営ではどのような手応えを掴みましたか。
多くのお客様に来ていただいたという実感があります。私が運営した糀(こうじ)のワークショップを含め、複数の店舗では商品が完売しました。ただ、そういった店と比べると来客数が少ない店舗もあったので、そのような店の売上をどう底上げするかは、全体を統括する私の反省点でしょう。
−−チケットの事前販売でも、人気店はすぐに売り切れていました。イベント全体の課題点としてはどのような点が挙げられますか。
2点あります。1つ目は広報・広告活動の期間が短かったこと。宣伝期間が1カ月しかなかったため、イベントの魅力を十分に伝え切るのは難しかったですね。2つ目は、一部の店舗のプログラムが、お客様のニーズから外れてしまい、当初の収支計画を下回ったことです。今回のイベントは、夏休みの未就学児や小学生、その親御さんがターゲット層だったので、提供価値と価格を踏まえて親御さんに「お金を払ってもいいかな」と思っていただいた店舗に人気が集中していた印象です。
もちろん、これはあくまでも私見であり、経営に正解はありません。今回のケースも「たまたま戦略がうまくいった」店舗と、そうでない店舗に分かれたと感じています。では、その「たまたまうまくいく」確率をどのように上げればよいのか。それはこれから、KBSで勉強していきたいですね。
「学んだことを実践できた。」 イベントを終えて思うこと。
−−最後に、イベント全体を通じての感想をお願いします。
日ごろ大学院で勉強していたことを活かすことができたと思います。マーケティング活動として顧客のセグメント分けや、ターゲット層・商品価格の設定などは時間をかけてメンバーで議論しました。夏休みのかなりの時間を捧げることになりましたが、頑張って本当に良かったです。
イベント全体としては、75点くらいの評価だと思います。4年振りの開催という中で、過去最大級のお客様に沢山来ていただけたのは評価できる点でしょう。一方で、販促・広報活動のやり方や、お客様のニーズとのすり合わせ方などの課題も見つかりました。来年引き継いでくれる後輩たちには、ぜひ頑張ってもらいたいですね。
大盛況となった4年ぶりのサマースクールフェスタ。お客様にとって、そしてKBSにとっても「熱い夏」となったに違いない。完全燃焼の夏を過ごした山本さんは「まずはゆっくり温泉にでも行きたいですね」と笑顔で締め括った。
【プロフィール】やまもと・こうよう/1995年生まれ。新卒でダイヤモンド社入社後、経済メディア「週刊ダイヤモンド」「ダイヤモンド・オンライン」の記者を務める。2023年4月に休職してKBSに入学、本イベントの実行委員会委員長を務めた。日頃は、勉学に加えて他ビジネススクールとの連携を担う「MBA交流会担当」の役職も務める。
【注】*KBS:Keio Business Schoolの略称。
(廣野凜)