就職活動において、マスコミ業界は人気、倍率が非常に高く「狭き門」と言われる。マスコミ就職に向け奮闘している塾生も多いだろう。そこで、マスコミ志望の学生が直面する実態を知るため、慶大の三田キャンパス就職・進路支援担当の八木絵美さんに話を聞いた。
採用の少ないマスコミ業界
マスコミ業界への就職が難しいことについて「そもそも、他業界と比べマスコミという業界に所属している会社の数、採用人数が少ないんです」と八木さんは語った。
マスメディアとはメディアを通じて大衆に情報を届ける媒体のことだが、マスコミ業界として明確に切り分けることは難しく、分類は流動的だ。 近年の塾生のマスコミ業界への就職人数は、狭義のマスメディアとして新聞の全国五大紙、テレビの在京キー局とNHK、通信社に絞ると、概数で60人後半から70人ほどだ。他方、慶大の 『就職ガイドブック』を見ると、1社で就職人数が80人超の業界もある。
内定をつかむ学生の4つの特徴
「加えてもう1点、個人的な見解としては、求められる能力レベルが高く、適性の評価基準が厳しいという理由があるのではないかと思います」
塾生と接する中での実感として、内定を掴む学生の特徴が4つ挙がった。
まず「精神的と体力面の両方におけるタフさ」。ステークホルダーが多く、調整力が求められ、限られた時間の中で時にシビアな情報を聞き出すため、精神的な強靭さを要する。昼夜を問わない活動も多く、体力面でもハードな仕事だ。さらに記事を書く上で迅速に高い言語化力を発揮するための「言語能力」、頭の回転や行動力における「スピード感」も欠かせない。鋭い視点を備え、目端が利かせるなどの「時流や物事の流れをキャッチする敏感さ」も重要なようだ。
ライバルと差別化を図るには
高い能力が求められ、大変な職種にもかかわらず人気な理由を尋ねた。
「塾生全体の傾向として大変であることは分かっていても、自分のやりがいを重視して、かつ、自分に備わった能力や適性を最大限に生かして自分が成長したうえで、社会貢献したい、という意欲のある人が多いですね」
さらにマスコミ志望の学生について「マスコミ業界は官公庁ではないものの、社会における公益性が強く問われる業界だと思います。自分が社会に対して何ができるか、社会をよりよくしていくために自分に何ができるか考えている学生が多いのではないでしょうか」と語った。
これまでの取材から、採用人数の少なさや求められる能力の高さといった現状のなかで、マスコミ就職に奮闘する学生の抱える悩みを聞いた。
「数いるマスコミ志望者の中で、自分がどう個性を発揮して、きらりと光る能力、良さを相手にわかってもらえるか、つまり『差別化』に悩んでいる人が多い印象です」
差別化に悩む学生に対して「マスコミの選考では特に、考えたことも、接したこともないような視点や考え方を提示されても、きちんと受け止め、理解し、反論していけること、そしてそのための訓練が必要ですね」と助言をくれた。
社会問題を分析する際、自分の考えに沿うソースのみを重視するとカウンターの意見に反応できない。時流の変化に気付く敏感さや、思考のスピード感がある学生は、ディスカッションで上手な立ち回りができる。
「相手の反論や視点を受け止め、議論をより発展させていくことができる人はマスメディアに身を置いても輝き、社会をより良い方向に導く一つの力になれるのではと思います」と語った。