アーティスト、モデル、女優業、コスメプロデュースなど多岐にわたって活躍中の鈴木愛理さん。2022年にはデビュー20周年、23年にはソロデビュー5周年を迎えた。そんな鈴木さんに現在の活動から、楽しく生きるためのコツ、そして学生時代の思い出について詳しく話を聞いた。

本記事は、前編と後編の二部構成になっております。前編はこちら

 

芸能生活20年、さまざまな場で活躍するアーティストとして

 

――現在の活動で意識していることを教えてください。

ソロになって発信することにより責任を感じています。もちろんアイドルの時からありますが、それはグループとして持っていたもの。今は発案、企画から自分の意見を出せる環境になってやっぱり重みが違うなと感じます。慎重に言葉や伝え方を考えないといけない。そこが楽しくもあるんですけどね。

 

――さまざまな場で活躍していらっしゃいますが、どのように魅せ方を変えていますか。

私は昔からヘアメイクや衣装などの着飾るもので、持たれるイメージが結構変わるんですよ。モデル活動のときは、洋服やメイクをよりよく見せるために、ある意味こだわりは捨てています。肌ケアとかむくみに気を付けたり、自分という土台の調子を整えたりすることに専念します。女優業や『クラシックTV』(NHKクラシック音楽番組)に出演する際は、前髪はナチュラルな感じに。ライブとかアニメに関連するお仕事のときは、「アイドルの鈴木愛理」が求められていると思うので、アイドル当時の重めの前髪にします。昔は着飾るものでイメージが左右されることに悩んでいましたが、今はそれを強みにして現場によって見た目を変えています。

 

――『オーイシマサヨシ×鈴木愛理のアニソン神曲カバーでしょdeショー!!』での、アニメソングのカバーパフォーマンスが話題です。工夫していることはありますか。

アニソンとJ-POPは違うなって番組を通して気付かされて。アニソンは、アニメを見る前と後で、聞こえ方が違うと思うんです。だから、どの登場人物の気持ちを歌っているのか、なぜアニメのここで流れるのがエモいって言われるのか、とかさまざまな視点で考えるようにしています。

くわえて、カバーするアーティストさんの癖や、聞いている方の頭に残っていそうな部分は残しつつ、自分なりの解釈で歌うようにしています。モノマネになりすぎず、アニメへの理解も不足しないように。私もオタク気質で、アニメオタクの気持ちがわかるからこそ、アニソンをぞんざいに扱いたくないんです。カバーするたびに、そのアニメのオタクになって全力でリスペクトして歌っています。

 

――「アイドルが憧れるアイドル」の鈴木さん。理想のアイドル像はありますか。

目標の人を作ると、その人は超えられないんじゃないかって思っていて。「尊敬している人は母です」って、ずっと言ってます。芸能界において憧れの人はいたけど、目標の人は作らないようにしていました。自分は自分で生きたいなって。

昨今「アイドル」っていう言葉の定義が昔に比べて広くなりましたよね。昔は黒髪ロング、清楚、ピアスはダメ、みたいなイメージが求められていたように感じるのですが、2012年くらいからBiSHさんが幅を広げて欅坂46さんがダークな世界を見せてっていう感じで、アイドル戦国時代が始まったんです。最近はK-POPも入ってきてもはやどこまでを「アイドル」と呼ぶのかわからなくなって。

私は、夢と希望を与える人はみんなアイドルだと思っています。私は自分からはアイドルですとは言わないけど、私のことをアイドルと呼ぶ人がいてもいい。生きる希望とか夢を託してくれているのかなって思うから。

昔、そして今も「愛理ちゃんを見てたら、もうちょっと頑張ろうと思いました」っていう声をよくいただくんですね。そういう、アイドルであってもアーティストであっても、誰かに少しでも光を落とせるような存在でありたいなと考えています。

 

――「ポジティブの伝道師」として知られていますが、ポジティブ思考になれるコツはありますか。

ずばりネガティブな部分を見ることです!私は、割と根はネガティブな部分を持っていたり、意外と不安症だったりするんですよ。でも、コンプレックスとかネガティブな部分に目を向けて、改善して前に進もうって考えるようにしていて。自分の弱点を人前で発言しなくてもいいから、こっそり自分の中で弱点だと思う部分を磨くことで大きく向上できると思っています。

あ、でも小さなくよくよには睡眠が一番効きますよ(笑)。寝ないと人ってイライラするから絶対に寝た方がいいです。

あとは、「人生山あり谷あり」って言うじゃないですか。自分が落ちているときは、「あ、今谷にいるんだ!」って思うこと。落ちてる時って周りの人がきらきらして見えるけど、「きっとあの人も谷になる時がくる」って考えます。「今は谷、次は山」だと思って生きていこう!って。

 

――今後の展望を教えてください。

今いろんなお仕事をさせていただく中で、1番なくてはならないものが歌なんです。正直まだ音楽に一番自信がなくて、でも自分に期待はしていて。コロナ禍の話ですが、ライブがなくなって大声が出せなかったときに、8歳から大きな声で歌う環境にいたのですごく体調が悪くなったんですよ。意外と「歌う時間」が私にとっての体調やメンタルをコントロールする時間になっていたんだなって気づけたので、もちろん好きっていう気持ちも含めて、音楽を通して人に何かを伝えることは、歳をとってもやっていきたいと思っています。ジャンルは決めずに来たチャンスを掴みたいと思っていますが、強いて言うなら自分の言葉で曲を作りたいな。

 

――慶大生へメッセージをお願いします。

最初にSFC生へ。初めに情報基礎っていう授業があります。そこで英語の文章をブラインドタッチでタイピングするテストがあって。私それができなくて夏休みの補講まで行ったんですよ(笑)。だからとりあえずSFCにこれから入る人は、ブラインドタッチの練習をしといたほうがいいかもしれません。

それから大学生活って本当にその人次第で、過ごし方によって濃密度が違う4年間になると思うんです。正直、怠けることも楽単で卒業することもできる。私は、できるだけここでしかできないことを回収していこうと思って、いろんなジャンルの授業取っていました。結果楽しかったし、嫌なことや苦労したことも記憶に残っているけれど、それも含めて全部楽しんでもらいたい。人との出会いも大切にしてほしいです。

 

(横山真緒)

 

【プロフィール】

鈴木愛理(すずき・あいり)

アーティスト。慶應義塾大学環境情報学部卒業。

2002年にハロー!プロジェクトのキッズオーディション合格後、アイドルグループ「℃-ute(キュート)」やPopRockユニット「Buono!」として活動。2017年にハロー!プロジェクトを卒業し、翌年ソロ・アーティストとしてデビュー。その他モデルや女優業、コスメプロデュースなど幅広く活動中。