お笑いタレントとしてのみならず、DJやエッセイストなど多岐にわたり活動しているふかわりょうさんに、慶大在学中のことについて聞いた。

 

慶大経済学部への進学を決めた理由を教えてください。

高校生の時に何の仕事を将来したいかを考えたときに、テレビの中に入りたいと思いました。当時は四大卒のタレントさんや芸人さんは少なく、大学に進学すれば目立てると思いました。僕はもともとお笑いの道に進もうと思っていましたが、もう一つの選択肢としてピアニストなど音楽の仕事もしたいなと思っていました。その二つに共通しているのは、年をとってもそれがハンディキャップにならずむしろ味になるということです。テレビの世界で何十年と生きていくには、それなりの思慮深さが必要で、ひょうきんなだけではいけないなという考えに至り、受験を選びました。

 

─ 在学中はどんな学生でしたか。

内部進学者を冷ややかさと羨望と色々な思いが交錯する目で見ていました。仲良くなりたい思いと仲良くなりたくない思いのせめぎあいでしたね。結局、よく有名なサークルに場所をとられていた学生食堂は、一回も使わずに終わった気がします。二階か三階のカツカレーばかり食べていましたね。

キャンパスライフでは友達がいないとノートが回ってこなくて試験で太刀打ちできないので、一応テニスサークルとラテンアメリカ研究会に参加していました。ほとんどテニスサークルの方は行ってなかったんですけど、ノートだけ確保する入手ルートだけ毎年確認していましたね。

 

─大学在学中に芸人としてデビューされましたが、当時の状況を聞かせてください。

二十歳になったら門をたたこうと決めていたので誕生日を迎えた八月に色々な事務所に電話しました。当時はYouTubeなどもなかったので、テレビの世界に飛び込むためにはプロダクションと接点をもたなくてはいけなかったんですね。今の事務所にネタを見せにおいでと言われました。ネタを見せに行くときに、最初の数カ月は何をやったらいいのかわからなかったです。友達の前やサークルの合宿の余興の場でネタの試し打ちをしましたが、やっぱり友達を笑わせるのとお客さんを笑わせるのって本質的に違いましたね。そういうことを経て見つけた自分なりのスタイルとネタが深夜番組に引っ掛かり、そこから全国に広がりました。白いヘアターバンをしてやるネタがあるのですが、そのネタをやる前からあのターバンをして、キャンパスを歩いていたり、授業を受けたりしていましたね。

 

─自分の魅力を研究して見つけて、それをネタとしていたということですか。

そこまで冷静ではなかったですね。一人でやるネタって、コントと比べてあまり参考になる教科書がないんですよ。僕の中で無理なく永続的にできるものって何だろうと考えたときに、あのスタイルがちょうどよかったんです。

 

─友達の前でネタを披露した際は、羞恥心はありましたか。

僕に限らず芸人さんは羞恥心が強く、敏感な方が多いと思います。恥をかくことが壁にならない方もいるかもしれませんが、自分の考えがどこまで通用するのか、自分の面白いと思う感覚がどこまで広がるかを知りたいんです。大げさかもしれませんが、周りが笑ってくれることでようやく息ができて、存在を許される気持ちになりますね。

 

─在学中の思い出を教えてください。

ほかの大学の学園祭に芸人として呼んでもらうこともありましたが、三田祭では一学生として、ラテン喫茶でマテ茶を入れてました。三田校舎一階の教室でラテン喫茶をやりましたが、それはそれで楽しかったです。めちゃくちゃナンパしてましたね(笑)。

一番の思い出は、サークルでの思い出ですね。ラテンアメリカ研究会でラテン音楽を夜通し演奏するフェスティバルが福島県であったんです。年に一回そこに行くのですが、部員で集まって何台かの車で行くんですね。その時に僕が乗った車が部長の車で、部長はいかに低コストでその旅をするかを重視していて、車の燃費の良さを追及していました。そうすると、時速60kmで走らなければならないんです。高速道路を使わずに、ひたすら空いてる下道を通っていましたが、前を走る車の速度が遅いといらいらしはじめていました。彼はその度で車の燃費に命を懸けていましたが、二年留年していて彼のキャンパスライフはすごく燃費が悪いなと思いましたね(笑)。

 

─学業とお笑いの仕事を両立させるうえで大変なことや辛いことがあったときにはどのように対応していましたか。

当時は学生をしながらということが一つの免罪符になっていたかもしれませんが、学生だからという事が免罪符になってほしくはなかったです。そのため、早く大学を卒業して、学生という見えない鎧を脱いで、自分の実力で戦いたいなと思っていました。

 

─ふかわさんはお笑いのみならず、音楽やエッセイなど幅広いジャンルでご活躍されていますが、その秘訣を教えてください。

僕のなかには原液のようなものがあって、それを音楽やエッセイ、ラジオなど色々なフィルターでこすと出てくるものがあるだけで、二刀流とかそういうものではありません。原液は一つだけで、それが場所によって抽出されるものが違うというだけですね。

 

─慶大生へメッセージをお願いします。

そうですね、どうしようかな、みんなが二郎系ラーメンを好きだとは思わないでください。

久米里佳