「さあ、多くの人の心に残るお祭りを。」
熱い眼差しでこう語るのは、第34回七夕祭の運営を担う湘南学祭実行委員会代表の新村彪雅さん(=総3)だ。七夕祭は、毎年7月に開催される慶大湘南藤沢キャンパスの学祭である。同委員会の戦略部長を務める小田島真由さん(=総3)にも同席してもらい、今年度の開催内容や七夕祭にかける思いを聞いた。
テーマに込められた想い
今年度の七夕祭のテーマである「さあ、」という言葉には、後ろに続く言葉を参加するすべての人が七夕祭を通して見つけてほしいという思いが込められている。このテーマに沿って委員の学生は本番に向けて準備に励む。小田島さんは「時代の変化と共に様々な形をとってきたという経験を踏まえ、今年改めて原点に戻り一歩前進させていこうと後押しするものになれば」と語った。
今年の見どころ
七夕祭は五慶祭のひとつで、毎年7月の頭に湘南藤沢キャンパスで開かれる。様々なサークルの屋台出店やパフォーマンス披露だけでなく、地域団体との協力による企画や委員会主催の企画、そして1日目の夜には浴衣を着て打ち揚げ花火を見ることができるなど、賑わいを見せている。新村さんはこの七夕祭を通して、「楽しかったと思ってもらえる人が、1人でも多く増えてほしい」と切実な想いを語った。ここ数年のコロナ禍の影響で多くの制約を受けてきた行事だが、今年度は規制緩和に伴い、調理を含めた食品販売が解禁されたことでコロナ禍前の盛り上がりが期待される。
塾内認知という課題
そんな七夕祭だが、塾内における認知度という点では課題が残るという。代表自身も、「別のサークルで活動する中で、まだまだ認知度が足りていないという現状を目の当たりにした」と語る。そのようななか、小田島さんが務める戦略部長という役職は、まさにこの課題を解決する上で重要な職務になる。湘南学祭実行委員会の中には数多くの局や企画が存在しているが、そのうちの戦略部が対外的な戦略を考えるという役割を担っており、広報局・渉外局・デザイン局・各種プロジェクトを束ねている。その部の先頭に立つのが小田島さんだ。今年度の戦略については、「アナログとデジタルの両立」を意識したと話す。SNSを利用した広報活動が主流になるなかで、藤沢という都心とは少し離れたところにあるキャンパスだからこそできる部分に注目し、地域住民との直接的な対話を通して湘南台駅や辻堂駅、近隣の商店街などで広報物の配布などを行なっているそうだ。
代表就任までの道のり
新村さんは「代々受け継がれてきた七夕祭という行事を、持続的かつ安全に継続させていきたい」と語る。二人からは、七夕祭の認知度向上とお祭りの発展への熱意が伝わってきた。
新村さんは元々積極的に委員会の活動に参加しているわけではなかったという。1年生の時には思うようにコミットできていなかったそうだが、2年時に幹部に任命され、自分の頑張りが自身の企画の成功につながったことが大きなきっかけとなった。周囲からの賛同を得て自信につなげることができた新村さんは、「自分の企画に入ってよかったと思ってもらえるように」という感情が「多くの委員が湘南学祭実行委員会に入ってよかったと思ってもらえるように」と組織全体を想う気持ちに変化した結果、代表への立候補を決めたという。「周囲から雰囲気がいい、企画そのものがいいと褒めていただけた。自分が信用して大事にしている仲間たちからそんな風に言ってもらえたことがすごく嬉しかった」と振り返る。「委員会で活動する中で挫折することや嫌になることもあるかもしれない。けれども、委員会に入ってよかったなと心の底から思える組織にしたい、そんな雰囲気づくりをしていきたい」と語る代表の顔はとても輝かしかった。
戦略部長までの道のり
小田島さんは、兼ねてより組織全体を引っ張っていきたいと考えており、入会当初から組織の中核を担う役員を目指していた。2年時に幹部として経験した企画の仕事を通して「技術だけでは解決できない、人をまとめることの難しさ」や「1人の力ではどうにもならない部分がある」ということを実感した。そこで、どういった形で委員会を引っ張っていけるかを改めて振り返った結果、「自らにとって最も身近で、自分の強みを活かすことのできる戦略部というフィールドでみんなを引っ張っていく」ということを決意し、戦略部長への立候補を決めたという。「みんなの『やりたい』を叶える」と話した小田島さんの目からは強い意志を感じることができた。
委員会のこれから
湘南学祭実行委員会という組織は2021年に七夕祭実行委員会と秋祭実行委員会の融合によって生まれた組織であり、設立からの歴史はまだ浅い。七夕祭の運営という点では伝統が受け継がれてこそいるものの、組織としての将来は現在の意思決定にかかっていると言っても過言ではない。そのような重要な時期に役員を務める二人に、今後の委員会の展望や、あってほしい姿を聞いた。
新村さんは、何より塾内において誰もが知っているというレベルでの七夕祭の認知が広まってほしいと願いつつ、他の福利厚生団体との連携など祭りの運営だけにとどまらない横のつながりの強化や拡大にも挑戦してほしいと語った。既に300人近い人数が所属している大規模な組織だからこそ、さらに活動の規模が大きく濃くパワーアップしていくことが予想される。そうしたなかで、七夕祭を2日にわたって開催をしている意義を改めて考え直してほしいという。
小田島さんは「七夕祭と言ったらこれだよね」という認識を持ってもらえるような、七夕祭ならではの強みを模索し多くの方々に広めてほしいと語る。時代に柔軟に対応してきたなかでも、開幕当初から受け継がれてきている浴衣を着る文化や打ち揚げ花火の文化などの伝統的な側面も忘れずに大切にしてほしいと述べた。
最後に
久々となる、参加団体の調理販売解禁や、新たな試みとなる広報の企画、アプリケーション開発などで生まれ変わった七夕祭。数多くの委員主催企画もあり盛りだくさんのお祭りは7月1日(土)と2日(日)に湘南藤沢キャンパスで開かれる。塾生諸君にはぜひ足を運んでもらいたい。
(坂本健斗)