慶大三田キャンパス内にあるミュージアム、慶應義塾ミュージアム・コモンズ(通称KeMCo「ケムコ」)では、葛飾北斎と歌川国芳の作品を紹介する展覧会を5月15日~6月13日(前期)、6月15日~7月15日(後期)で開催している。前期と後期では約半数の作品の展示替えをする予定だ。

 

今回はミュージアム・コモンズの専任講師、松谷芙美さんに見どころを聞いた。「北斎と国芳の関係性に注目してみると面白いかもしれません」と松谷さんは語る。
言い伝えでは、国芳が北斎を慕っていたものの、北斎が国芳と親密な関係になるのを拒んだとされている。しかし国芳は確実に北斎の影響を受けているそうだ。「2人は似た者同士なんですよ」。彼らの共通点は、江戸時代後期の絵師であり、どちらもエキセントリックな技法が特徴的であるところだ。
「本展では浮世絵以外にも、葛飾派、歌川派の下絵も展示しています。複製版画ができるまでの製作の様子が想像でき、2人の筆跡の違いを分かりやすく見比べることができます」

会場の様子

本展の最後には、展覧会を見て北斎と国芳の絵、どちらが好きだったかを投票するコーナーがある。
「美術は難しいというイメージがあるかもしれませんが、事前知識は必要ありません。絵を見てただ感じるだけでいい。美術の楽しみ方は人それぞれですから。2人の絵を見て、来てくださった方の心に残るような展示になっていたらとても嬉しいです」

北斎と国芳の絵を選ぶ投票コーナー

また「見る」こと以外にも特徴的な企画がある。来場者の顔を認識してAIが浮世絵風に顔を描いてくれたり、ポストカードに浮世絵のシールを貼ったりして美術を「体験」する工夫が施されている。
10月からの2カ月間は、室町時代の雪舟の作品を含む水墨画の展覧会を開催予定。松谷さんによると「渋かわいい」展示を目指して準備中だという。
「よく知っている絵でもデジタルで見るのとリアルで見るのは違います。大きさや質感が予想とは異なるかもしれないし、版画には凹凸やぼかしなどさまざまな技法が用いられています。学生のみなさんにはぜひ、空いている時間に気軽に立ち寄ってほしいです」

横山真緒