就活で欠かせないのが、時事問題に関する知識だ。この時事問題を知るために必要なのが新聞だ。ただし、「急に新聞を読み始めるのはハードルが高い」と朝日新聞社人事部は感じたという。そこで、今年人事部としては初めてとなる講義「就活生のためのニュースの読み方」を開催した。
技術の発展に伴い、近年は誰でも簡単にニュースを収集できるようになった。Webでは、無料で幅広いカテゴリのニュースを見ることができる。「物心がついた頃からスマホなどを使い始めた今の世代にはすごく自然なことかもしれない」と人事部の國米さんは話した。
有料ニュースの強み
このような状況の中で、有料のニュースは苦境に立たされている。有料のニュースには、独自の強みがある。当日の講義を担当した人事部の栗田さんは「新聞記者は表面的な事象を追うだけでなく、背景や経緯、解決のヒントなどを取材し、丁寧に裏付けをとっている。そこに労力やコストがかかっていることも知ってもらえたら」と話す。
講義では、参加した就活生によるニュースの長所に関する意見交換も行われた。身の回りにないことを知ることができる、コミュニケーションが広がり、国際感覚を養われるなど、その挙げられた長所は多岐にわたった。栗田さんは「世の中で何が起きているかを知ることは、社会人にとって需要や課題、ビジネスのヒントをつかむ上で必須です」と語った。
栗田さんは、ニュースの長所について、予兆を感じることの大切さを訴えた映画プロデューサーの川村元気さんの言葉を紹介した。創造的な仕事をする上で、何かに気づくために、ニュースを知ることが大事であるというのだ。
新聞の価値とは
「新聞が厚すぎて、読む時間がなかなかない」と思う就活生も少なくない。まずは、見出しやリード文を中心的に読みながら、色々の記事を俯瞰的に読むのが望ましいという。ただし、決まった読み方があるわけではなく、最初は自分の関心があるテーマの記事から読めばいいと栗田さんは話した。自分が立っているライフステージで、いま関心がある記事を読むことで、その近くにある記事などたまたま目に入ったものに興味を持つこともあるためだ。「むりやり興味がないものを読むよりは、関心からどんどん視野を広げてほしい」と栗田さんは語った。
変化するニュース配信
「新聞ってもう不便で古くない?」と懐疑的な反応を見せる大学生もいるだろう。しかし、新聞社のニュース発信=紙の新聞、ではなくなっている。朝日新聞も実際、デジタル空間の無限性と可能性を認識し、映像などを活用して朝日新聞デジタルを運営している。栗田さんは紙の新聞だけにこだわる必要はないと強調した。生活様式の変化に応じて媒体の形を変えることについて下駄を例に「下駄を求めない時代に、いくら下駄を作り続けても難しい。だが、履物がいらなくなったわけではないので、みんなが求めている履物を作ればいいのだ」と述べた。國米さんは「自分のライフスタイルに合っている媒体が一番」と話し、自分の生活パターンに最適な媒体を選んで欲しいと加えた。
朝日新聞では、デジタル版のトップニュースも、アルゴリズム最適化に依存せず読者が読むべきだと思うニュースを手動で取捨選択している。デジタル版でジャンルを指定せず、興味を持ったものを読むことで、どんどん自分の興味と関心を広げることができる。また、就活生がよく使うSNSにも定期的に記事を掲載している。有料読者ではなくても関心が注目される、社会的インパクトが大きい記事がその対象である。また、紙面の購読に学生割引制度を導入するなど、新聞を読み始めるハードルを低くするための努力がうかがえた。
(朴太暎)