慶大は5月15日、チャットGPT等生成AIの利用に関する大学の方針を発表した。「独立自尊」の精神のもと、授業内利用については学部・研究科や担当教員の判断に従う方針だ。発表の経緯や今後の方針について松浦良充常任理事が取材に応じた。
慶大の方針は大きく分けて3つ。各授業科目において
- 学部・研究科や担当教員が許可する場合は方針に従って適正に活用
- レポート等に生成AIを利用した場合は明記が必要
- 独力で取り組むことが求められる場合は利用不可
今回の発表は全学共通の指針となる。大学としての一律禁止はなく、必要に応じてより詳細な方針が各学部・研究科や各授業内において示される可能性がある。不正利用の処罰は各学部・研究科による判断となる。
慶大は、生成AIの利用方針について4月上旬から議論を重ねてきた。4月21日、大学の教学関係の最高意思決定機関「大学評議会」にて懇談が行われ、5月12日に、全学部・研究科の代表者が参加する「大学教育委員会」の議論を経て、春学期前半の試験日程発表前の公表に至った。AI利用は慶大内でも様々な意見があり、各学部・研究科の判断を尊重しつつ連携を図る予定だという。慶應義塾の一貫教育校での利用法については、文科省の議論を踏まえ現在検討段階にある。
チャットGPTなど生成AIの利用には危険性も指摘される。作成した文章を利用して意図せず著作権を侵害する恐れや、個人情報を書き込んだ際に流出するリスクがある。利用には十分注意が必要だ。松浦常任理事は「技術を活用する際には社会的影響についても考えてほしい。かねてより利用されているSNSにも情報漏洩のリスクはある。情報化社会における便利な技術の利点と問題点をそれぞれよく勉強してほしい。そのうえで、『独立自尊』の精神のもとで利用できるものは利用するのが望ましい」と呼びかけた。
生成AIとは、既存の学習データをもとに画像や文章、音楽などを生成する人工知能のこと。特に対話形式で自然な回答を作成する「チャットGPT」が話題となった。今年4月から多数の大学が生成AIの利用方針を発表。上智大学がレポートや課題提出のための利用を禁じたほか、東京大学が一律の禁止はせず積極的に利用の可能性を探る方針を示すなど、大学間でも対応が分かれている。