2009年に9期生としてAKB48に合格、その後2018年には日韓同時放送オーディション番組「PRODUCE48」に参加し、現在はソロアーティストとしてグローバルな活躍を見せる竹内美宥(たけうち・みゆ)さん。2014年に慶大環境情報学部に入学した塾員でもある。

SFCでの経験が今に活きていると語る大学時代、そして、さまざまな経験を経た現在「人の心に残り続ける曲を作って歌っていきたい」と意気込む竹内さんの今後の展望に迫る。

写真撮影中には、たくさんの表情とポーズを見せてくれた

――AKB48としてデビューされる前から芸能活動をされていましたよね。幼少期から歌手やタレントが夢だったんですか?

元々は文房具屋さんになりたかったんですよね。芸能界に興味はなかったんですけど、友達に連れて行かれたイベントで「テレビに出てみない?」という話になったのがきっかけです。

 

――その流れでAKB48のオーディションを?

芸能活動をやっていくうちに、「音楽をやっていきたい」というのが明確になっていって。小学生・中学生でも歌をやれるのは何かと考えて、AKBを受ける流れになりました。

 

SFCでの学びが集約されて今につながる

――芸能活動をしながらも、大学進学を決めたきっかけは何でしたか?なかでも、慶大の環境情報学部を選んだのはどうしてですか?

お仕事をしていたので、大学に行くっていう考えは本当はなかったんですよね。通っていた芸能学校の先輩が慶應に入ったという話を聞いて、そこから何かチャレンジしたいなという思いもあったり。あと、自分の中で学生生活を送ることで得られる「普通の感覚」も大切にしたいと思うようになって。この2つのきっかけがあって、大学を目指すことにしました。

その先輩がSFCに進学したというのが、SFCを選んだ理由の最初にはありました。それがきっかけでいろいろ調べたら、自分がやりたい音楽の授業だったり、インターネットに強い学校だったり、未来的なところを学んでいけそうだなと思って。

 

――SFCには、さまざまな種類の授業があると思います。印象に残っている授業はありますか?

すごく面白い授業が多いんです(笑)。SFCってすごい自然がいっぱいなので、そこら辺に落ちてる葉っぱとか木の枝を使って、お弁当を作ろうっていうのがあって。体育の授業なんですけど。

そういった珍しい内容の授業ですが、後々ブーメランのように考えさせられることがあります。今になって、自然に触れ合いながら作っていくことで得られたことがたくさんあったと気付きました。

 

――SFCでは何語を学んでいたんですか?

言語の授業は割と受けていたんですけど、韓国語の授業も取っていました。韓国に行く機会(PRODUCE48)が偶然できて、授業が役に立ちました。コミュニケーションが他の子よりできたっていうのは、大学の知識が活きました。

大学当時は何も計算していなかったし、ただひたすらに飛び込んでいただけでした。だけど、その数年後とかによく考えてみると、ちゃんと今に結びついたりしています。絶対何かしらの力になる。

 

――学びが活きているんですね!

音楽を学びつつ、心理学とか哲学も学んでいて。今は曲を作ってるんですけど、音楽は作曲で役に立つけど、作詞には心理学や哲学が重要なので。そういう意味では、SFCでいろいろ学べたことが、今1つにぎゅっと集約されてるんじゃないかな、って思います。

大学生は、やっぱりいろいろなところに手を伸ばして、可能性を見つけるべき時期なんじゃないかな。

 

――授業を真面目に受けつつお仕事もしていて、友人と遊ぶ時間はありましたか?

大学の後に遊ぶっていうのは、なかなかできなくて。空きコマでみんなでお弁当食べることはありました。そういう友達とは、卒業した後もずっと繋がったりしていて。大学生って、「将来これやりたい」っていうのが、小さい時より明確になってるじゃないですか。それを追求している最中に出会う友達だから、近い要素を偶然にも持ってる。卒業後も、お仕事に繋がったりしています。

そう思うと、大学時代の友達って今後10年、20年、30年、と自分が仕事をするにあたって、すごく重要な関係になったりします。ぜひ新入生のみなさんには、大学時代に出会った子たちを大切にして欲しいです。

 

海外で活動したいというきっかけで出場した「PRODUCE48」

――塾生時代の話からは外れますが、「PRODUCE48」というオーディション番組への出場は、大きな決断でしたよね。何かきっかけがあったんですか?

元々海外で活動したいというビジョンがあったのでそれが一番のきっかけです。また、AKB48として卒業前に何かグループに残したいという思いも強く持っていたので、「世界的な大きな舞台で成し遂げたい」という気持ちに至り出場を決めました。

 

――実際にプデュ(「PRODUCE48」)では大きな脚光を浴びました。

第一話から注目していただけました。もちろんタイミングとか運とかもあるとは思うけど、自分をどう見せたらいいか、こういう風にアピールしたらテレビに映るんじゃないか、っていうのは逆算していて。自分の中では、戦略がありましたね。

 

――AKB48の卒業後は、韓国の芸能事務所と専属契約を結びましたね。韓国で挑戦したいという気持ちがあったんですか?

元々海外で活動したいという気持ちはありました。せっかく韓国できっかけができて、ファンの人も増えたので、「行かないわけにはいかない」って。それで、韓国語で履歴書を書いて、飛行機に乗って、アポとか取らずにそのまま事務所に直談判しました。今考えると、相当危険なことをしたなと(笑)。

 

――今は日本に帰国されていますが、海外での活動は現在も視野に?

海外を視野に入れて準備しています。同時に、今後は漠然とさせることや流されてみることも楽しみながら、活動していこうと思っています。

 

「いつまでも愛されて誰かの心に残り続ける」曲作りを目指して

さまざまな曲をカバーした竹内さんのYouTubeチャンネル『MiyuTube』

――『MiyuTube』を拝見して思ったんですが、80年代などのレトロな曲のカバー動画をよく投稿されていますよね。そのくらいの年代の曲がお好きなんですか?

そうですね。80年代とか昔っぽい様子とか、その時代に流行した音が、自分が作る曲でもどこかしらの要素として入っています。

どんな時代になっても残り続ける音楽、というのが一番クールだと思っています。いつまでも愛されて誰かの心に残り続ける曲を目指していきたいです。

 

――韓国の音楽プロデューサー・DJのNight Tempoさんとの楽曲『Sentimental』も、とてもかっこよかったです。

それこそ、Night Tempoさんとは韓国で出会って。そこからお仕事につながりました。

 

――偶然が繋がっているんですね。

人生って、計画性とか大切だと思います。私も、計画通りに生きたいっていう人生なんです。でも結局、自然に導かれているような感じがあって。流れに身を任せてみることも大事なのかなって、最近思ったりしていて。偶然とか必然を信じた人生も、歩み方としては大事かな。その中で、戦略をところどころ使うのが強いのかなって思います。

 

作詞作曲も自身で行う現在

――YouTubeでの生配信での選曲や寸劇は、全部竹内さんご自身で?

 そうです。今の音楽の聴き方って、「プレイリスト聴き」じゃないですか。自分の好きな傾向にある音楽ジャンルをひたすら聴くみたいな。そういうところにアプローチするためにも、「○○縛り」というテーマでの生配信を始めました。間に寸劇を入れたのも、アイドル的なパフォーマンスを入れた方がいいな、っていう戦略がありました。

 

――現在は事務所には所属せずにフリーで活動されていますよね。

小さい頃から今まで、必ず事務所でサポートしてくれる人がいたんですよ。すごい恵まれた環境にいたので、今後誰かにサポートしてもらうためにも、そういう人たちの気持ちを分かりたいなって。準備期間じゃないですけど、力を蓄えていろいろな部分を想定して理解を深めたい。

今は、曲も自分で作っていて。音楽学校に通っていた時期もあったので、作詞作曲しています。でも、絶対人に頼らないといけない部分は人生で出てくるので。これからは、たとえば作詞は自分でするけど、アレンジは任せるとか、演奏は任せるとか、いろんな人のアイデアを入れて、作品を出したいという意識があります。

 

「自分と常に対峙しながら、疑いながら進んで」

――壮大な目標ですね。では最後に塾生、そして新入生にメッセージをお願いします。

自分の気持ちややりたいことに素直になって、学生生活を歩んでほしいな。「この勉強をする」って決めてその通りに歩むのもいいと思うんですけど、自分と常に対峙しながら、疑いながら進んでいくことが、長い目で見たときに幸せを維持できるんだと思います。

新入生のみなさん、焦ることはまったくないです。とにかく自分の知的好奇心にしたがって、焦らずにものを吸収していってください。

 

「人の心にちゃんと残り続ける曲を作っていきたいというのが、自分の軸にある」。取材の最中に、竹内さんはこう語った。慶大での学びや韓国での挑戦という偶然に身を任せることと、効果的な戦略による成果が組み合わさって、今の竹内さんは作り上げられている。たくさんの経験を経てきた竹内さんだからこそ、多くの人の心に残り続ける曲を生み出せるのだろう。

がむしゃらにもがくのではなく、少し自然に流されるのもいいかもしれない。そう背中を押してくれる取材だった。

【プロフィール】

竹内美宥(たけうち・みゆ)さん

2014年に慶大環境情報学部に入学。2009年にAKB48第6回(9期生)オーディションに合格し、「真夏のSounds good!」で表題曲初の選抜入りを果たす。2018年には日韓同時放送オーディション番組「PRODUCE48」に参加。AKB48卒業後は、韓国の芸能事務所との専属契約やYouTubeでの動画投稿など、アーティストとしてグローバルに活動している。

 

竹内美宥さんのYouTubeチャンネルはこちら

 

(山下和奏)