昨年12月4日に境川自転車競技場で行われた第55回早慶自転車競技定期戦(以下、早慶戦)で、勝利を収めた慶大自転車競技部。早慶戦での勝利は実に21年ぶり、6度目である。主将・佐藤岳選手(政3)へのインタビューを通して、歴史的な一戦の裏側に迫る。

表彰式後の集合写真

 

今大会では、各種目の順位に応じて得点が入り、6種目の合計を競う。佐藤選手は、最初の種目で1位から3位を独占し、良い流れを作れたと振り返る。従来、早大に完敗していたエリミネイションレースやスクラッチなどの中距離種目でも、上位に食い込めた。

団体では、チームスプリントは0.03秒差で慶大の勝利、チームパシュートは0.09秒差で早大と大接戦。最終的には、慶大65―53早大、と大差をつけての総合勝利となった。

ケイリン試合中。白のユニフォームが慶大

勝因は連日練習場に通い詰めたこと。「試合に向けてたくさん練習したぶん、足が自然に動いた。実力を出しきれたと思う。」早慶戦にかける想いの強さで勝利を掴み取った。

練習内容は緻密だ。自分と相手選手の分析を行い、部員主導で一からメニューを組み立てた。普段から、監督から与えられた内容をこなすのではなく、個々人が自分に必要なものを見極めて練習しているという。

個人の能力だけでなく、チーム全体の総合力強化も功を奏した。部員は半数以上が競技未経験者。部内ブログで練習内容を共有し、互いにアドバイスしやすくしている。「自転車競技は、練習も試合中も個人の戦いになることが多い。ただ、チーム全員で勝ちを目指す意識があったと思う」

佐藤選手は勝利を受け、早慶戦が持つ意味の変化を期待する。スポーツ推薦がなく未経験者も多い慶大は、現在大幅に早大に負け越している。そのレベル差から、早慶戦を一種のイベントのように軽く捉える時期もあった。早大選手から、早慶戦の意義に疑問を持たれることもあったという。

 

しかし、今大会は慶大65―53早大と、10点以上の差をつけて勝利した。「次回からは、勝ちを狙いにいく大会になる。早稲田もリベンジのために相当練習してくると思う。お互いが本気になれる試合になる」

歴史的勝利をあげたものの、昨年はインカレ総合入賞を逃すなどの悔しい経験もあった。部は、今年の目標を2つ掲げる。

まず、クラス2の選手を増やすこと。クラスとは、日本学生自転車競技連盟が定める競技能力の指標。3から2に上がることで、インカレ出場資格などが与えられる。

現状、クラス1と3の部員しかおらず、選手間の実力差が大きい。クラス2の選手を増やし、部内での競争を促す狙いだ。その中でチームの総合力を底上げし、最大の目標であるインカレ総合入賞へと繋げたい。120年という部の歴史の中で、入賞経験はまだない。「今のチームならできる」と意欲を見せる。

佐藤選手は、「自転車競技は、魅力がたくさんあることが最大の魅力」と語る。地道な努力が結果に直結する点が好きな者もいれば、そのスピード感に心惹かれる者、自転車の改造・整備にそそられる者などさまざまだ。「自転車競技はまだまだマイナースポーツ。多くの人にその面白さを知ってもらいたい」

2月26日には、「明治神宮外苑大学クリテリウム」が控える。これからも、目標に向けて車輪を止めない自転車競技部から目が離せない。

(藪優果)