2月17日から23日は、公益財団法人日本アレルギー協会が定めたアレルギー週間だ。塾生でも、花粉症やアレルギー性鼻炎などに悩む人は少なくない。アレルギー疾患と、その最新の治療について、慶大病院アレルギーセンター・センター長の福永興壱教授に話を聞いた。
アレルギー疾患には、気管支喘息や食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜症など、多くの種類がある。金属アレルギーなど、アレルギー反応が発生するメカニズムの違いからすぐに症状が出ない種類のアレルギー疾患も存在する。
アレルギー疾患の患者は、複数の種類のアレルギー疾患を併せ持つ場合が多い。さらに、アレルギー疾患を発症した子どもが、成長とともにほかのアレルギー疾患を獲得してしまう「アレルギーマーチ」という現象もある。アレルギー治療では、診察料の垣根を越えて患者の症状を診ることが適切な治療に繋がると考えられる。そのためアレルギーセンターでは、「(関係する科が)みんなで協働しながら1人の患者さんを診ていくという体制を取っている」と福永教授は話す。当センターは、小児科や呼吸器内科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科、消化器内科といったアレルギー疾患に関わる診療科が連携し、横断的な治療を行っているのだ。
近年注目されているアレルギー治療薬に、「抗体製剤」という注射薬がある。抗体製剤はアレルギーの原因となる物質や細胞、反応にピンポイントで作用するため、従来の薬剤に比べて、副作用が小さく患者の身体に優しい。さらに、この抗体製剤はアレルギー反応の原因を抑えるため、複数のアレルギー疾患を同時に抑えることが期待できる。例えば、抗IgE製剤であるオマリズマブは、気管支喘息と重度の花粉症、慢性の蕁麻疹に効果がある。
複数の疾患に効果がある薬剤をほかの科と連携して処方できれば、全身的なアレルギー疾患を適切に治療できる。診療科を越えた協働が可能なアレルギーセンターでは、患者の情報を共有することで、患者に適切な投薬を検討することができるのだ。
福永教授は「さまざまなアレルギーを持っていて、どこに相談したらいいかわからない、という人は、アレルギーセンターに来ていただけると、連携のなかで診てもらえる可能性がある」と話す。慶大病院アレルギーセンターの取り組みは、複数のアレルギーを持ち苦しんできた人にとって大きな助けになるかもしれない。
(竹之内駿摩)