昨今は慶大に限らず、多くの大学の一般選抜が変化を見せている。入試方式はそれぞれの大学のアドミッションポリシーを色濃く反映する。そこで今回は慶大を中心に各大学の入学試験の変革を調査し、アドミッションポリシーの潮流を分析した。
慶大、指針に変更無し
まずは慶大から見てみよう。先日発表された一般選抜の一部方式変更には、どのような意図があるのだろうか。慶應義塾大学入学センターの担当者に問い合わせたところ、いくつかの質問に回答をもらった。
–従来の一般選抜の良かった点と、改善するべき点はどこにあるのでしょうか。
従来から「知識」だけに留まらず、論文形式の試験科目や記述式の回答を含む出題により「思考力・判断力・表現力」を適切に評価してきました。2025年度以降の一般選抜においても、この方針に変更はありません。
–入試制度改革に伴い、受験生にはどのようなことを期待したいですか。
受験生に期待することは、これまで通り各学部のアドミッションポリシーに記載しています。2025年度以降の一般選抜に限らず、慶應義塾大学では各学部がアドミッションポリシーに沿った多様な入学者選抜を実施しています。
–法学部の試験時間と配点の変更にはどのような意図があるのでしょうか。
従来の法学部一般選抜における「地理歴史」の回答はすべてマークシート方式でしたが、2025年度以降はマークシートによる解答と記述式による解答を求めます。それに伴い、2025年度以降は地理史の試験時間を60分から90分に延長し、配点を100点から150点に変更しています。
一般選抜の内容に変更点こそあれ、現段階では慶大のアドミッションポリシーに変化はなかった。しかし、法学部の地理歴史に記述問題が追加されたことで、学生に伝統的に求められていた「思考力」がより深く試されることになるだろう。従来から求めていた学生の資質を、より高いレベルで募集するという狙いでの変更なのかもしれない。
英語4技能重視の傾向、加速か
今回の慶大の一般選抜における変更は、文学部が実用英語技能検定(以下、英検)を導入したことが大きな話題となった。しかし、同様に英語外部試験を入試制度に組み込み、英語4技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)を重視している大学は増加している。
例えば立教大学では、すべての学部の一般選抜の「英語」でさまざまな英語外部試験が活用されており、そのスコアの換算得点や大学入学共通テストの「英語」の得点を、一般選抜の「英語」の得点としている(文学部の一部方式を除く)。英語外部試験を入学試験の英語に加点する方式を採用する大学は多いが、立教大学のように大学独自の試験自体を全面的に外部試験で代替する大学は珍しい。
また、英語外部試験以外の独自の方法で4技能の測定を行なう大学もある。東京外国語大学と東京女子大学では、一部の方式で「BCT-S」という英語スピーキングテストを実施している。東京外国語大学とブリティッシュ・カウンシル(*)が協働で開発したもので、タブレット端末を使用する点が特徴だ。受験生は案内に従い配布されたタブレット端末を操作し、表示された問題への回答をマイクに向かって話す。自分の意見をプレゼンする問いがあるため、英語を用いつつ思考力も試される。
時代とともに変化してきた大学入試。見えてきたのは、思考力と総合的な英語力が求められる潮流だった。理想の学生像を映す大学入試がこの先どのような変革を見せるのか、これからも注目だ。
(廣野凜)
(*)イギリスの公的国際文化交流機関。1934年設立。