慶大生なら誰もが学ぶ語学科目。その教育に力を入れているのが慶大外国語教育研究センター(以下センター)である。
センターは、研究・教育・支援を柱とした義塾全体の外国語教育の充実を目的としている。その取り組みについてセンター所長である境一三教授にお話を伺った。
「研究をもとに教育を実践し、そこで得られた知見が研究にフィードバックされる、教育と研究が一体となって回るサイクルを作り上げたい」と境教授は話す。
センターには英語を含めた9言語の科目が設置されている。今回本紙記者は、境教授担当の、初級発音と聴解練習を中心に学ぶドイツ語表現技法の授業にお邪魔した。
授業で境教授は、口や舌をどう使うとその音が出るのかなど、発音の仕組みを知ることが大切だと説明した。授業を受けている塾生たちは、境教授がアルファベットを発音するのを見て特徴を観察したり、実際に自分で声を出して音ごとの違いを体感したりした。
塾生たちにこの授業を受けることにしたきっかけを聞くと「せっかく学習を始めたドイツ語にもっと触れたい」、「使えるドイツ語を身に付けたい」、「すでに学んだことのある言語と違うタイプの言語を学んでみたいと思った」との回答があった。
また授業の感想については「今まで気付いていなかった声の出し方や発声方法の違いなど、目から鱗が落ちるような経験ができた」、「言語学的な観点から発音を学べるのは有意義だと思った」、「発音について一から丁寧に教えてくれるのが良い」などと話した。
センターの授業では、学部の授業で網羅できない部分を補完するような内容を扱っている。リスニングや発音などのスキルに特化した授業や、英語基礎復習、英語・中国語超上級者を対象とした授業など、その内容やレベルは多岐にわたる。
境教授は「これらの授業は学部の授業のサプリメントのようなもの。専攻や自分の実力を問わず多くの塾生に授業に参加してほしい」と言う。
境教授がこのように語るのには理由がある。「実感がわかない人も多いかもしれないが、日本社会の多言語化が進んでいる今日、将来どのような形で外国語を使うことになるかわからない」と境教授は話す。
「たとえ学んだ言語を忘れてしまったとしても、言語学習を通して身につけた異文化を見る目や異文化に接する態度は、相手のことを尊重し理解しながら他者に関わっていくために重要。慶大生は卒業後、社会のリーダーとして活躍することになる人も多いのだから、ぜひ積極的に学習に取り組んでほしい」
その上で境教授は「外国への憧れなども大切にしつつ、楽しんで語学を学んでもらえればと思う」と話した。
(陶川紗貴子)